プレーバック日刊スポーツ! 過去の10月17日付紙面を振り返ります。2012年の1面(東京版)はブラジルに完敗4失点それでも本田「差ない」でした。

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<国際親善試合:日本0-4ブラジル>◇2012年10月16日◇ポーランド・ウロツワフ

 【ウロツワフ(ポーランド)16日=益子浩一、栗田成芳、松本愛香通信員】日本代表のMF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)が、世界の壁に直面した。親善試合ブラジル戦は0-4の大敗。右ふくらはぎ痛から復帰した本田は、ザッケローニ体制で初めて先発1トップに入った。16強入りした10年W杯南アフリカ大会以来の先発FWだったが、何もできずに不発。「W杯優勝」を公言する日本のエースが、この世界との「差」をどう埋めるのか。大きな課題を残した。

 冷たい雨が、本田の体に降り注いだ。試合が終わると、1人だけブラジル選手と握手を交わす輪には加わらなかった。両手を腰にあて、悔しそうにうつむく。これは親善試合。それでも本田は必死だった。超一流との差を知りたい。W杯優勝を狙えるのかを知りたい。本気でぶつかり、はね返された。これがW杯最多5度の優勝を誇る14年大会開催国ブラジルとの確かな「差」だった。

 本田 僕がサッカーを始めたのは、ブラジルと無関係ではないんでね。下馬評通り、案の定、負けた。楽しかったですよね。勝てたら、勝てたで偉そうに言っても良かったかもしれない。でもそんなに簡単に勝ったら、この先、面白くなくなるやん。確かにひとつ言えることとして、負けは負け。0-1でも、0-2だったとしても負けです。

 ゴールが遠い。ザッケローニ監督就任後初めて先発1トップに入った。10年W杯で2得点を挙げた位置。後半からは香川と2トップに近い形になった。開始9分に香川からのパスを受け、左足でGKを襲う強烈なシュート。後半8分にも本田-香川-本田とゴール目前で短いパスをつなぎ、王国守備陣を慌てさせた。一方で、前半27分に遠藤の絶妙ループパスをシュートに持ち込めず。下がりすぎる場面もあった。どんな強敵でも、少ないチャンスを確実に得点するのがエースの仕事。不発ではいけない。

 時間は待ってくれない。W杯まで残り1年8カ月しかない。W杯予選は首位を独走。親善試合を組んでも、国内での試合ばかり。厳しい戦いが少なく「強くなっている」という錯覚があったのも事実。歴史的金星を挙げたフランス戦も、内容は押されていた。10年W杯で16強、今夏のロンドン五輪で4強。優勝は現実的ではないにしろ、14年W杯では決勝トーナメントで勝つことが最低ラインだ。ザッケローニ体制で初めて、試練に立たされたと言っていい。

 それでも本田は、冷静に現実を直視した。試合終了から約1時間後。スーツ姿に着替えると、あえて笑顔を作って、残された期間内で「差を埋める」ことを頭の中で考えた。

 本田 (課題を)話すと長くなるんでね。そもそも、点差ほどの差はなかったというのが俺の考え。これは負け惜しみでも何でもない。点差ほどの差はない。

 壁にぶつかっても、試練に立たされても、はい上がってきた。W杯優勝を諦めるはずもない。強気な男は、崖に突き落とされても、はい上がるすべを知っている。【益子浩一】

 ◆日本のAマッチ4失点 ザッケローニ監督下では2失点(過去2度)を上回るワースト記録。4失点以上の敗戦は、06年6月22日のW杯ドイツ大会1次リーグ第3戦、この日と同じブラジルに1-4で敗れて以来。4失点以上の完封負けとなると、01年3月24日のフランス戦(0-5)、いわゆる「サンドニの悲劇」以来。

 ※記録と表記は当時のもの