<国際親善試合キリン杯:日本1-0コートジボワール>◇24日◇豊田

 FW玉田圭司(28)が値千金の一撃で、岡田ジャパンに待望の白星をもたらした。前半21分にMF長谷部誠(24)のクロスを左足ボレーでゴールにたたき込んだ。06年6月22日ドイツW杯1次リーグのブラジル戦以来、実に1年11カ月、702日ぶりの代表でのゴールを決めた。その後も積極的なドリブル突破で好機を演出。所属の名古屋の本拠地豊田スタジアムで堂々の主役になり、代表定着をアピールした。

 何かに押されるように、玉田は全速力で走った。足元に長谷部からのクロスが届く。スライディングしながら左足ボレーで反応。ヒットしたのはすね付近と完ぺきではなかったが「ゴールならどんなのでもいい」。執念で相手GKのまたを抜いた。

 代表では約2年ぶりに味わう感触。長い空白を埋めるように、左手の人さし指を振って余韻に浸った。エース高原を押しのけての先発。痛い星を落としたバーレーン戦のモヤモヤを一掃するため、思い切った手を打った岡田監督の起用にも一発回答した。

 06年W杯でブラジルから歴史的ゴールを奪ったが、その後、左足はくすぶっていた。ジーコ監督に高く評価された才能の持ち主だが、オシム体制では1度も声が掛からなかった。代表と無縁だった昨季は右足甲の骨折でシーズン中盤で4カ月も離脱。07年は結局リーグ14試合出場5得点。代表からも遠ざかり「『元代表』と言われるのがイヤ」。腐りかけていた。

 今季就任した名古屋ストイコビッチ監督との出会いで生まれ変わった。1月末、チーム始動間もないころ部屋に呼ばれ「君は日本のベストプレーヤーだ。ゲームを楽しめ。自由に、思い切ってやってみろ。オレが後ろについているから」と背中を押された。屈指のテクニシャンで天才肌。共通点の多い「師弟」は固いきずなで結ばれた。

 観戦したピクシーの目の前で、沈黙した2年間を自身のゴールで打ち破った。「いま思えば、そう長くはなかった。今につながっていると思えるから」。正念場の6月のW杯3次予選をも明るく照らす一撃。「この前の(ドイツW杯)予選を経験している選手はそうはいないので」。技術とスピードを生かし、再び日本をW杯へとけん引するため、頼もしい言葉とともに走りだした。【八反誠】