<W杯アジア3次予選:日本3-0オマーン>◇2組◇2日◇日産スタジアム

 キャプテンマークを巻いたDF中沢佑二(30)が勝利への扉を開いた。前半10分、MF遠藤の左CKに対し、豪快にダイビングヘッドをたたき込んだ。日本代表では通算14得点目で、同DF歴代最多得点記録を自ら更新。W杯予選では初めて主将を任され、がけっぷちの一戦で攻守に存在感を発揮した。日本の大黒柱は中村俊だけではない。

 ゴール前での相手DFとの主導権争いから、中沢は気迫がみなぎっていた。前半10分の左CK。マークについていたDFファラジアラーの胸を突き飛ばす。距離をつくると一気にゴール前に飛び出した。ユニホームを引っ張られてもお構いなし。最後は完全に振り切ってダイビングヘッドをゴール右にたたき込んだ。

 右拳を突き上げながらほえる。そしてFW玉田をはじき飛ばすように胸からぶつかった。「(早い時間帯に)点が入らなかったら、と頭の中によぎっていた。おとりになった闘莉王に『ありがとう』と言った?

 覚えていない。すぐに気持ちを切り替えていたから」。油断のできない戦いであることは自覚していた。

 自身2度目のW杯予選で初めてキャプテンを任された。「左肩が重くなった」とおどけたが、重みは実感している。「もう30歳だから。チームのことを思って声を出した。今までいい先輩の背中を見てきたから」。この日の出場選手のうち、5人がW杯予選初体験。岡田監督の思いもくみ取って、経験の少ないメンバーに積極的に声をかけた。「昨日(の練習で)はみんな声が出ていなくて、W杯予選はそんな甘いものじゃないと監督に言われた」。やるべきことは分かっていた。

 バーレーン戦に敗れ、岡田監督の進退問題まで取りざたされた。だが修羅場をくぐり抜けてきた中沢は動じなかった。「雑音に惑わされないようにと思った。周りから何を言われてもやることは変わらない」。必勝の一戦で、主将の大役を先制弾と完封という結果で果たした。「あと3つ残っている。突破するには3つ勝つしかない」。力強く、残り全勝を宣言していた。【広重竜太郎】