<W杯アジア3次予選:オマーン1-1日本>◇7日◇2組◇ロイヤル・オマーン・ポリススタジアム

 跳んだ!

 止めた!

 GK楢崎正剛(32=名古屋)が岡田ジャパンの窮地を救った。MF遠藤保仁(28=G大阪)の同点PK直後の後半13分、相手PKを横っ跳びで防いだ。GK川口能活(32=磐田)からレギュラーを奪った守護神が、酷暑のアウェーで1-1のドローという最低限の結果を呼び込んだ。岡田ジャパンは貴重な勝ち点1を得て2位をキープ。14日の次節タイ戦(アウェー)で引き分け以上なら、バーレーン-オマーン戦の結果次第で最終予選進出が決まる。

 極限の緊張感の中でも、楢崎は落ち着いていた。闘莉王がファウルしてPKを与えた。日本が1-1に追いついたわずか5分後だった。勝ち越しを許せば、一気に流れが悪くなる場面。楢崎は低い姿勢でオマーンのキッカー、ドゥールビーンの足元をぐっとにらみつけた。

 右足インサイドからボールが放たれると、思い切って左に跳び、左手に当ててはじいた。目の前に転がったボールに素早く食らいついて胸元に抱え込んだ。鬼気迫る表情で、絶叫した。「夢中だったからよく分からないけど、相手の動きが見えた」と振り返る。「先に失点しないのが僕の仕事だけど、それが先に失点して、何とかしようと思っていた。それがあのPKだった」。岡田ジャパンに「条件付き王手」をもたらすスーパーセーブだった。

 「耐える男」の真骨頂だった。安定した力を誇り、常に代表に呼ばれるのに、川口の陰に隠れていた。02年のW杯日韓大会では全4試合で日本のゴールを守り続けたが、その後はジーコジャパンで控えが続き、オシムジャパンでも20試合のうち1試合に出場しただけだった。それが、5月24日のキリン杯コートジボワール戦から、これで4試合連続先発。「日本のGK全体の力を高めることが大事。試合に出られなくても、やることはある」と話していた男が、岡田監督の信頼に応えた。

 PKでも相手より先に動かず、耐えることがポリシーだ。「苦しいときほど、腹を決めないといけない。(相手の蹴る方向を)見切ってから跳ぶ。どんな状況でも、先には跳ばない」。この日のPK阻止も、我慢比べに勝った結果だ。

 0-1で敗れた3月のW杯アジア3次予選バーレーン戦では、川口がパンチングをミスして失点につながった。楢崎はライバルを気遣って言う。「キーパーはあれが捕れていたとしても、違うミスをするかもしれない。そういうものです」。この日はミドル弾を止めきれずに先制されたが、終盤のピンチでも動じず、1失点だけで切り抜けた。楢崎は最終予選進出に向け、14日のタイ戦でも日本のゴール前に立ちはだかる。