日本サッカー協会が新型インフルエンザ拡大の影響を受け、5月27日に大阪・長居スタジアムで開催されるキリン杯・日本-チリ戦の無観客試合を検討していることが17日、分かった。同日、新たに兵庫県や大阪府で国内感染者が確認されたことを受け、同協会の犬飼基昭会長(66)は最悪の場合、国内初の無観客試合を視野に入れていることを明かした。中継するテレビ局とも話し合いを開始しているもようで、18日から地方自治体とも相談の上、本格的な協議に入る。

 新型インフルエンザの国内感染拡大を受け、犬飼会長はこの日、Jリーグ鬼武チェアマンと緊急の電話会談を行った。特にキリン杯・日本-チリ戦(27日)の開催地域となる大阪府で感染者が増え続けていることに危機感を抱き、今後の対応策について意見交換したという。犬飼会長は「最悪のケースとして無観客試合ということは視野にある。あくまでも最悪の場合だが」と、国内初となる無観客試合を行う可能性を示唆した。

 犬飼会長は13日、新型インフルエンザへの対応について、選手と観客の安全確保を最優先とする態度を表明していた。ここにきて大阪府が一部学校に休校、民間集客施設にも休業を要請する事態に発展。一方で、試合日まで10日を切っており、会場変更は現実的に難しい。同会長は「これからいろいろな情報を集め、どういうやり方があるのか検討を重ねていくが、どういう状況になっても(キリン杯は)やりたいと考えている」と説明。選手の健康と観客の安全を確保しながら長居スタジアムで開催する方法として、無観客試合を検討する姿勢を示した。

 もともとチリ戦は、日本代表岡田監督が同国代表ビエルサ監督との対戦を熱望して実現したカード。6月6日のウズベキスタン戦(アウェー)を皮切りに、残り3試合となったアジア最終予選に向け、重要な親善試合と位置付けている。現時点で大阪府からスポーツイベントの自粛を強く求められていないこともあり、同会長は「チリ戦は、代表の強化のためにどうしてもやらせてやりたい試合なので、中止ということは考えていない」と試合開催の方針は変えないという。

 最大5万人収容の長居スタジアムでのチリ戦のチケットはほぼ完売状態。無観客試合となれば、入場料だけで約2億円以上の減収となる見通しだが、もはやお金の問題ではない。協会サイドは試合を中継するTBSと具体的な話し合いに入っているもよう。スポンサーとなるキリン側も冷静に推移を見守り、協会の決定を尊重する考えだという。

 日本代表戦の無観客試合となれば、ジーコ監督時代の05年6月8日、タイ・バンコクでのW杯アジア最終予選北朝鮮戦以来だ。その時は報道陣や関係者以外はスタジアムに入れず、覚悟して応援にかけつけたサポーターはスタジアムの外から声援を送った。18日から日本協会内で本格的な協議をスタートさせ、今週中にも無観客試合にするかどうかの最終判断を下すことになりそうだ。