<アジア大会・サッカー:日本1-0UAE>◇男子決勝◇25日◇中国・広州

 U-21(21歳以下)日本代表のエースFW永井謙佑(21=福岡大)が今大会5得点で大会得点王となった。日本代表ザッケローニ監督(57)が視察する前で五輪世代だけではなく、A代表でも活躍できる実力を証明した。アジア大会初制覇に「みんなは2軍とかいっていたので見返すことができた」と雑草軍団での快挙を勲章に、日本のエースへの階段を上り始めた。

 雑草軍団のエースが5得点で大会得点王になった。一番高い表彰台から日の丸を見つめA代表への思いをはせた。「目標は代表でやることですけど、このチームメートともまだまだやりたい」。自ら依頼し用意した「雑草軍団Tシャツ」を着込み低評価だった前評判を覆した思いをぶつけた。「大学生やJでも試合に出てない人ばかりで2軍とか言われていましたからね」と金メダルを下げた胸を誇らしげに張った。

 永井は決勝でも速さを見せつけた。前半19分に右足でファーストシュート。同43分もMF東のパスに抜け出してチャンスをつくるなど得点は無かったが日本に勢いをつけた。後半にはスピードがあるあまりに相手GKと衝突しイエローカードをもらう場面もあった。

 エースはアジア大会に照準を合わせていた。福岡大・吉塚トレーナーの「永井スペシャルメニュー」で1カ月間鍛え抜いた。陸上のハードルを並べ1歩ずつ跳び越える。浦和DF坪井が8台連続で跳び越えたことを聞くと、難なく10台を跳んでみせた。「瞬発力が並外れている。筋肉全体がまりのよう」と同トレーナーは形容。さらに毎日40分~1時間のシュート練習を繰り返しゴールへの執着心を植え付けた。その成果を大舞台で見せつけた。

 66年バンコク大会で、永井と同じ大学4年で6得点を挙げ得点王を獲得した釜本邦茂氏は、日本から永井の活躍を注視していた。「スピードもテクニックもある。これから私を追い抜いていくかも分からない」と期待を寄せた。さらに「点をとりにいける若者が出てきたことがサッカー界にはプラス。勝つことを知ることが一番大きい」と偉業をたたえた。ザッケローニ監督も「この若い世代が成長することで、次代の日本代表も成長していく」と永井の成長を喜んだ。

 前線から運動量豊富に追いまくる強さ。「正直出られると思わなかった」と語るケガへの強さ。結成1カ月の雑草軍団の快足FWが、今まで成し遂げられなかった頂点獲得という大きな花を咲かせた。【鎌田直秀】