戸惑いながらの代表復帰となった。6月のブラジルW杯以来5カ月ぶりに日本代表に招集されたDF内田篤人(26=シャルケ)が10日、チームに合流した。W杯直後は代表引退を示唆したが、復帰をめぐる報道に戸惑いを受けながらも戻ってきた。フライブルク戦(8日)で負傷した左手首は固定し、代表初日の練習メニューを問題なく消化した。再び日の丸を背負い、歩み始める。

 ブラジルのクイアバで涙を流してから139日。内田が再び日本代表選手として戻ってきた。慣れ親しんだ顔もいれば真新しい顔も並ぶ新しい日本代表。宿舎でアギーレ監督とわずかばかりのあいさつをかわし、迎えた初日練習は1時間半のメニューで再出発した。しかし今回代表復帰に至るまでの過程は、簡単なものではない。そんな葛藤は、自分にしか分からない-。だからこそ、取材ゾーンでとまどいを隠さず、第一声はこうだった。

 「(新聞などで代表復帰に向けて)勝手に話がどんどん進んでいって。意図しないところで進んでいたから、怖いな、と」

 6月24日(日本時間25日)コロンビア戦後、日本代表から退くことをほのめかした。そのまま右膝負傷が完治しないまま迎えた新シーズン。自身の決断以前に実戦から遠ざかっていた。同時にアギーレ体制が始動。9月24日ブレーメン戦での戦列復帰後、日本協会側は実力・経験ともにある内田の代表復帰に動いた。霜田技術委員長も現地に出向き、招集を要望するアギーレ監督の意向も伝えられた。同時に復帰をめぐる報道。騒がしくなる周囲にとまどいながらも歓迎ムードは漂う。

 右サイドでコンビを組むことになる本田は言った。「篤人は誰もが認める日本代表でも数少ない経験を持つ選手。入ることで必ず日本代表がパワーアップする。今までチャンスをもらっていた選手もレギュラー争いをすることで、代表は底力がついてくるんじゃないかなと思います」と相乗効果にも期待を寄せる。

 直前に危ぶまれた左手の負傷には「手は別にサッカー選手なんで、折れていても関係ない。あの程度で折れていたら骨が足らない。腫れはひどいですけど」と内田らしく言った。まずは14日ホンジュラス戦。72キャップ目のピッチを踏んだとき、内田にとっても日本にとっても大きな意味がそこにはある。【栗田成芳】