ありがとう万博! G大阪FW宇佐美貴史(23)が、3得点を演出し逆転3位でのチャンピオンシップ(CS)出場へ導いた。山形に4発浴びせて快勝。CS最後のイスを争った東京が引き分け、年間勝ち点63で並んだが、G大阪が得失点差で上回った。来季から新スタジアムに移るため、リーグ戦ではラストとなった本拠地、万博記念競技場。数々のドラマを起こした思い出の地で有終の美を飾った。

 大歓声で揺れた。圧勝を告げるホイッスルが鳴っても、宇佐美はピッチ中央に残り、不安そうにベンチへ視線を送った。年間勝ち点3位だった東京が引き分け以下なら、逆転のCS出場が決まる状況。しばしの静寂を待って、東京ドローの情報が届き、ベンチがガッツポーズすると、選手それぞれと抱き合って喜んだ。

 5分間「万博の神様」が舞い降りた。0-0の後半16分、宇佐美の1本のクロスが流れを変えた。右から上げるとGKにはじかれ、こぼれ球をMF大森が決めた。「流れを作ることを意識していた」。直後の2点目、3点目もエースの右足から得点が生まれた。

 万博最後のリーグ戦。宇佐美にとっても大事な場所だ。物心がつく前、1枚のスーパーの福引券をきっかけに導かれた。母美紀さん(54)が開幕したばかりのJリーグのペアチケットを当てた。幼い宇佐美を連れて足を運んだ。それ以来、一家は攻撃的なスタイルを突き通すガンバのファンになった。

 ゴール裏に向かって右の最前列にシートを敷いて応援する「貴史くん」は有名だった。そこから、G大阪の下部組織を経てエースへと成長。万博で夢を与える立場になった。この日は、かつての“指定席”の真っ正面から先制点の起点になった。「ガンバが貫いてきた(攻撃的な)戦い方をして終われたのはすごく良かった。万博に(CSへ)進ませてもらった」と晴れやかな顔で話した。

 見事な逆転劇だ。2試合前に年間勝ち点3位に浮上したが、前節敗れて同4位に転落。再び追う立場で迎えた最終戦だった。それでも長谷川監督は「1年間精進した結果として、CSのチケットをサッカーの神様がご褒美としてくれたのかな」。28日には浦和とCS準決勝を戦う。宇佐美は「今の勢いをぶつけたい」。リーグ連覇へ向けて、G大阪の逆襲はまだ終わらない。【小杉舞】