浦和MF柏木陽介(28)が「戦う司令塔」の真価をJリーグで示す。

 チームは27日、他の主力メンバーとともに走り込み中心の軽めの調整。ACLのアウェーFCソウル戦から中3日で迎える29日鳥栖戦へ、疲労回復を重視して準備を進める。

 そんな中、柏木は他の選手を周回遅れにするほどのハイペースで走った。この1カ月ほど、走り込みの際には必ず見られる光景。敵地での120分にわたる激闘の疲労や、PK戦での悔しい敗戦のショックもある状況でも、ピッチを蹴る足取りの強さに変わりはなかった。

 「ホンマ走れている。リカバーでもあれだけ走れているのは、多少疲れていても動く身体になってきているということ」

 昨季から取り組んでいる肉体改造が、ここに来て実を結んでいる。筋力強化と体脂肪コントロールを並行して行い、走法自体も見直してきた。

 球際の強さ、運動量は格段に上がった。25日のFCソウル戦でも、延長戦で周囲が足をけいれんさせる中、まったく運動量を落とさず走り続けた。前線まで顔を出して相手にプレッシャーをかけ、ボール奪取につなげた。

 日本勢のACL敗退を問題視するハリルホジッチ監督も、27日のキリン杯日本代表発表会見では、守備力向上の柏木を絶賛した。

 「信頼しています。もともとはパワーがなかったが、トレーニングで補いつつある。守備時のアグレッシブさが出てきている。相手にプレッシャーを強くかけられる。自軍がボールを失った瞬間、前に出ている。彼の動きがプレッシングのスイッチになっている」

 柏木はこれを受け「すべてにおいて向上している、ともコメントしてくれていた。自分本来の持ち味である攻撃面の方も、きちんと見てくれている」とうなずいた。しかしすぐに「これで満足しないし、これ以上のものを出さなあかん」と表情を引き締め直した。

 「鳥栖戦もガンガンいくから見とってよ。代表の話はその後でええでしょ」。

 肉体改造の成果が出てきた今季開幕直後は「感覚が違う」と繊細なボールタッチへの影響も出ていたが、ここに来て「この身体にも慣れた」とフィット。加えて、どう猛な猟犬のような鋭いプレスで、相手からボールも強奪する。

 来季のACLでリベンジするためにも、敗退を悲しんでいるヒマはない。代表定着に向けても、指揮官の評価が高まる今こそが勝負の時でもある。激しく。強く。そして華麗に。たくましさを増す柏木が、アジア敗退から再起を期するチームを、力強く引っ張る。