<J1:鹿島4-0名古屋>◇第14節◇28日◇瑞穂陸

 鹿島が新旧代表コンビのスーパープレーで2位名古屋に4-0で圧勝した。1点をリードして迎えた前半28分、MF小笠原満男(29)が利き足とは逆足の左足で約30メートルのロングシュートで2点目。後半ロスタイムにはDF内田篤人(20)が約70メートルのドリブルで4点目をアシストした。W杯アジア最終予選の対戦国決定から一夜明けた試合で猛アピール。この日、柏に1-2で敗れた首位浦和に、勝ち点1差と肉薄した。

 新旧代表が個人技で度肝を抜いた。先陣を切ったのはMF小笠原。前半28分、ハーフウエーラインを越えた位置から左足を鋭く振り抜いた。30メートルのロングシュートは糸を引くような弾道で、代表GK楢崎の横っ跳びをかわし、ゴール左上隅へ吸い込まれた。

 左右両足を自在に使いこなせるが、利き足とは逆足で約30メートルの長距離を射止めるのは至難の業。ルーキー時代から成長を見守ってきた鈴木満取締役強化部長でさえ「満男のあの距離の左足ミドルは記憶にない」。それでも本人は「誰もプレッシャーに来てなかったから。枠に行くように打っただけ」と平然と言った。

 後半ロスタイムには内田が現日本代表の神髄を見せつけた。「子どものころはファンだった」という名古屋ストイコビッチ監督が見守る相手ベンチ前付近でパスカット。2人のマークを一気に抜き去った。両親は元陸上選手というサラブレッドは「4、5メートルより200メートルとか距離が長い方がいい」という自慢の加速力で相手ゴール前まで70メートルを独走。ペナルティーエリア内での切り返しで3人目のマークを抜き去り、正確なクロスで4点目をアシストした。「高校時代はあれぐらいの距離は走っていた」と笑顔だった。

 27日に日本代表のW杯最終予選の対戦相手が決まった。9カ月の長丁場で過酷な移動もある。代表チームにはこれまで以上に層の厚さと、多様性が求められる。約2年間代表から遠ざかっている小笠原も「どんな相手でも簡単ではない。W杯予選は厳しい戦いなのだから」と思いを募らせた。岡田ジャパンで定位置を確保している内田も個人技のレベルアップの必要性を痛感している。「最終予選はヘェ~コラ戦えないからね」と独特の口調ながらも気を引き締めた。

 最終予選は組織力だけでは対抗できない場面も出てくる。この日見せた2人の個人技は、今後の岡田ジャパンに必要な武器になりそうだ。【広重竜太郎】