<天皇杯:仙台2-1大宮>◇10月31日◇3回戦◇NACK5

 J1の壁を突き破った。J2の2位仙台が、J1の15位大宮に挑み、延長戦の末に2-1で競り勝った。前半27分にFW中島裕希(25)が先制。PKで追いつかれて90分間では決着しなかったが、延長前半12分にMF梁勇基(27)が決勝の直接FKを沈めた。99年のJ2参入後、ベガルタが天皇杯でJ1クラブに勝つのは初めて。

 ペナルティーエリアのわずか外で自ら得たFK。MF梁が右足をコンパクトに振った。ゴール右隅に低弾道で突き刺す決勝ゴールに「(延長突入で)体力の限界だったし『これが決まれば勝つんやろうな』って気持ちだった。ピッチがぬれてたんで低い球を芝で弾ませた」と、狙い通りの一撃にも冷静な梁。7月19日のリーグ鳥栖戦以来約3カ月ぶり今季6本目の直接FK弾で、J1を撃破した。

 J2の意地を込めた。昨年12月13日。J1磐田との入れ替え第2戦でも直接FKを決めたが、1-2で敗れた。梁は「去年は喜べなかったけど、今日は勝利につながるJ1相手のFK。本当にうれしい」と素直に喜んだ。今季開幕前はJ1でのプレーを望み、去就に揺れた。複数のJ1クラブから興味を示され、越年すれば正式オファーが届く可能性もあったが残留。今季もJ2で戦う道を選びながら「J1でもできる手応えを感じた」と梁。進んだ道が間違っていなかったことを、少なからず証明した。

 J1に胸を借り、収穫も課題も見えた。DFマトのPKによる1失点でしのいだDF渡辺は「個人の力の差はあっても、チームなら通用する」と分析。FW中原は「空中戦で簡単に勝てないけど、負けることもなかった」と自信を深め、手倉森監督も「パススピードとか足りない部分も感じたけど、攻守の連動や一体感では通用したと思う」と納得の表情だった。

 99年のJ加盟以降、ベガルタが天皇杯でJ1を下すのは初めて。7季ぶりのJ1復帰がかかる8日のアウェー水戸戦へ向けて、上昇気流に乗った。【木下淳】