J2東京Vの三浦泰年監督(47)が、「ヤス・スタイル」で名門再建に乗り出した。昨季チームトップの18点を挙げた得点源、FW阿部拓馬(25)のドイツ2部アーレンへの完全移籍が23日に発表されたが「彼のことは考えたことがない」とどこ吹く風だ。東京・稲城市で行われた練習では、細かくルールを設定した紅白戦で「考えるサッカー」を徹底。6季ぶりのJ1復帰へ、ヤス流改革が始まった。

 ヤス監督による名門再建が始まった。この日、行われた紅白戦。ただの紅白戦ではなかった。片方のチームはボール回しだけで、もう一方にはボールを奪ってからのバックパスを禁じ、スピードを緩めずにゴールを狙うプレーを求めた。次から次へと指示の声を飛ばし、動き出しの遅い選手には「もっと速くプレーに絡んでこい」と精力的に指導した。

 求めるものは「考えるサッカー」だ。ヤス監督は「試合と同じシンプルなルールなら簡単にプレーできてしまう。より難しいシチュエーションを与え、いつも考えさせる。そうすれば試合でより速く状況に合った判断ができる」。その指導法は、かつて日本代表を率いたオシム元監督にも通じる部分だ。同じ北九州からやってきたMF安田は「できた部分もあったし、まだまだなところもあった。選手間でどれだけ共通意識を持てるか」。チームへの期待感をにじませた。

 昨年までの得点源FW阿部の移籍がこの日、発表された。昨年J2で65点(2位)を挙げた東京Vだが、阿部がダントツの18得点。次点が西らの6点だけに、数字上の損失は大きい。それでもヤス監督は「編成作業が終わってから、阿部がいたらとか、彼のことを考えたことは1度もない。阿部の次に同じ役割をしたいという選手がうじゃうじゃいる」と言い切った。

 ヤス監督が現役時代は、体幹トレーニングすらなく「根性しかなかった」と言う。ゆえに指導を学び、理論を身につけた。満足な戦力が整わないJ2北九州で11年は20チーム中8位、12年は9位と実績を残した。だからこそ言う。「(始動してから)ここまでは誰でもできる。これを365日、いや2年、3年、引退まで続けていってほしい」。名門再建は1日にしてならず-。東京Vの復活へ、考え続ける姿勢を求めた。【千葉修宏】

 ◆三浦泰年(みうら・やすとし)1965年(昭40)7月15日、静岡市生まれ。静岡学園からサントス(ブラジル)留学を経て86年読売入団。92年Jリーグ発足前から清水で活躍、96年にV川崎(現東京V)へ。福岡を経て02年から神戸。03年現役引退。神戸統括本部長などを経て、11年から北九州監督に就任。J1通算258試合11得点。国際Aマッチ3試合。DF登録だが本職は守備的MFだった。横浜FCの元日本代表FWカズ(三浦知良)は実弟。<ヤススタイルとは>

 ◆其の一「あいさつ基本」

 チームに規律を求め、グラウンド内外でしっかりあいさつができるクラブへの成長を促している。

 ◆其の二「理論+情熱」

 理論派だが、選手の熱を大事にする。学業で合流が遅れた関学大DF井林が練習初日の23日からフルメニューを志願。その情熱的な姿勢に「伸びる要素を持っている」と感激した。

 ◆其の三「プレーヤーズ・ファースト(選手第一)」

 選手に伝えていないことは、関係者、マスコミにも言わない。

 ◆其の四「過度な期待はかけない」

 元日本代表FW高原の加入にも「彼1人に期待し過ぎないのが大事」。重圧を取り除くとともに、特定の選手に依存する体質を排除した。