<J1:鹿島0-2広島>◇第34節◇7日◇カシマ

 奇跡が起きた!

 広島が、史上4クラブ目となるJリーグ2連覇を達成した。MF石原直樹(29)が2得点を挙げ、2-0で鹿島に完勝。前節まで首位の横浜が0-1で川崎Fに敗れたため、最終節で頂点に立った。リーグ残り2戦で、首位との勝ち点5差をひっくり返す大逆転だった。主将でエースのFW佐藤寿人(31)が、今季17得点でチームをけん引。広島の黄金時代到来を告げる優勝になった。

 試合終了2分後、横浜が試合を終える前だった。途中交代でベンチに下がっていたFW佐藤は、森保一監督と抱き合った。スタジアムに連覇確定の放送が流れると、先陣を切ってピッチに走った。最終節での劇的な連覇。佐藤は「信じられない。普通じゃありえない」と笑顔を振りまいた。

 攻撃的なパスサッカーを引っ張ったエースは「サポーターには感謝の気持ちしかない。ありがとう、おめでとう。この2つの言葉を伝えたい」と声を弾ませた。オフには日本代表経験を持つ森脇が浦和に移籍した。今季は他クラブからの補強もなく、既存選手の底上げがテーマだった。19歳の野津田らがアジア・チャンピオンリーグなどで場数を踏んで成長。佐藤は主将として精神的にもチームの中心となってまとめた。

 「ありがとう」は、会場で見守った家族に向けられた言葉でもあった。両親とJ2千葉のMF兄勇人(31)の前で優勝を決めたのは初めて。昨年の初Vを両親は千葉の自宅でテレビ観戦、兄は治療で生観戦できなかった。「兄の前で決めたいと思っていた」。悩みを相談するなど絆の深い兄の前での優勝を喜んだ。

 昨年は得点王、今年は17得点。5月中旬からは9戦連続負けなし。7月10日の川崎F戦でハットトリックし、J2時代を含め10年連続2桁得点をJリーグ史上初めて達成した。同17日の仙台戦で今季初めて首位に立った。

 今シーズンは日本代表に選ばれなかった。兄勇人は「代表になることも大事だけど、寿人は誰よりも広島への思いが強い」。佐藤は言う。「苦しい時期もあった」。史上4チーム目の連覇を達成。気温11度と寒い冬空に2つ目の花を咲かせた。【辻敦子】