仙台のルーキーFW山本大貴(22)が、不屈の精神力で厳しい練習に食らいついている。昨年9月の関東大学リーグ戦で顔面骨折の重傷を負うアクシデントも、始動前に完治。09年度の高校選手権得点王が、駒大の先輩にあたる赤嶺ら強力FW陣から技術を学ぶべく奮闘中だ。

 慣れないポジションでも、山本が歯を食いしばっている。チーム事情で、実戦形式では左サイドバックに入ることがほとんど。昨年の宮崎キャンプに練習参加した際、マンチェスターUの日本代表MF香川似と言われたイケメンは「高1の時にやってたけど難しい。毎日が勉強で、夜もよく寝られます」と苦笑いする。

 本来は得点感覚に優れた左利きのストライカーだ。ルーテル学院高3年時の選手権では4試合で5ゴールを決め得点王。駒大でも1年から主力で「当時4年生の金久保さん(現J2長崎)が試合後に全身けいれんを起こすほど走っていた」と刺激を受け、無尽蔵のスタミナを身につけた。2、3年時にはベンチ外も経験し「精神面が成長した」と話す。大学最後のシーズンは前半戦だけで8得点。仙台のオファーを受け「行きますと即答した」と内定も決まったちょうどその頃、アクシデントが待っていた。

 9月22日の試合中、相手GKと接触して顔面を強打。意識を失って救急車で運ばれ「上あごは複雑骨折で、鼻と両方の頬骨も折れていた」と約8時間の手術を受けた。1カ月は流動食のみの生活。当時は7、8キロ落ちた体重も戻り「記憶がないので恐怖心もない」とキャンプに臨んでいる。

 昨季背番号28だったDF蜂須賀は新人ながら公式戦28試合に出場。先輩を慕う山本は「出世番号を止めるわけにはいかない」と気合十分だ。高校選手権得点王として大前(清水)、大迫(1860ミュンヘン)に続いた男は、1年目での初ゴールを目標にレベルアップに励む。【鹿野雄太】

 ◆山本大貴(やまもと・ひろき)1991年(平3)11月15日、熊本・宇土市生まれ。花園小4年からサッカーを始める。宇土鶴城中からルーテル学院高に進学し、1年からレギュラーとして選手権出場。3年時の選手権では4試合5ゴールで得点王。駒大ではU-19日本代表と大学選抜を経験。趣味は読書。178センチ、70キロ。血液型B。