イングランド・リーグ杯決勝が26日、ウェンブリー競技場で行われ、マンチェスター・ユナイテッドが2-0でニューカッスルに勝利した。モウリーニョ監督のもと、リーグ杯、欧州リーグを制した2017年以来、実に6年ぶりとなるメジャー大会での優勝トロフィー獲得だった。
ここ数年、低迷を続けていたマンチェスターUを、再び優勝争いができるチームに立て直しつつあるのが、今季から指揮を執るオランダ人のエリック・テンハグ監督(53)だ。
史上最高の選手の1人だが、クラブにネガティブな影響を及ぼすようになっていたロナウド(現サウジアラビア1部アルナスル)に未練なく別れを告げ、ラッシュフォードを欧州最強レベルのストライカーへと覚醒させた。
主将のマグワイアでも不振とあればスタメンを外し、妥協を許さない姿勢でクラブに一体感、緊張感、そして勝者のメンタリティーを植え付けた。ロッカー室の負の文化を短期間で一掃したその手腕は見事としか言いようがない。
マンチェスターUは現在、プレミアリーグで首位アーセナルと勝ち点8差の3位。FA杯、欧州リーグでも勝ち残っており、リーグ杯と合わせて「4冠」を獲得する可能性すら残されている。
テンハグ監督はマンチェスターUの監督に就任したことについて「この仕事を受けることはリスクがあったのでは?」と記者から質問され「リスクがあったかもしれないが、僕は少し頑固で、ただユナイテッドが好きなだけなんだ」と答えている。
この「頑固な(stubborn)」という言葉がテンハグ監督の本質を一番よく表しているように思う。stubbornには「頑固な」とか「不屈の」という意味があり、自分の考えを変えないというニュアンスも含まれている。
プレミアリーグの指揮官に就任することは、とてつもないストレスにさらされることを意味する。今季途中、ブライトンからチェルシーに引き抜かれたポッター監督は、チームの低迷によってネット上で殺害予告を受けた。
そんな状況の中で成功するには自分の中に確固たる自信を持ち、並外れた頑固さがなければならない。自分のものさしを持ち、相手がロナウドであっても態度を変えずに、自分の判断基準を貫き通す頑固さが必要だ。その姿勢をチーム全体に示すことで、若手選手たちも「ああ、この人はフェアな監督だ。信用できる」とついてくるようになる。
とはいえ、まだテンハグ監督はマンチェスターUの指揮官として優勝トロフィーを一つ獲得したにすぎない。これからも大なり小なりチームに浮き沈みはあるだろう。その時にも気持ちが折れることなく頑固さを持ち続けられるかどうか。興味深いところだ。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)