日本代表FW本田圭佑(29=ACミラン)が所属事務所を通してオーストリア3部のSVホルンを買収し、実質的なオーナーとなった。日本でほとんど存在を知られていなかったクラブを手に入れた本田の狙いは? 最高経営責任者(CEO)兼副会長に就任した神田康範氏(34)に聞いた。

 -今回の実質的な買収劇は、本田選手のサッカーに対する気持ちのあらわれなのでしょうか

 神田氏 本田には大きな夢として、世界一のサッカー組織をつくりたいという思いがあります。会社はそれに沿って動いていきます。母体のスクールも今は日本で完結していますが、今後はアジアに大きく展開したいですし、欧米でも運営できないかと模索しています。本田の考える組織、年代別ピラミッド型の土台の部分はまだまだ大きくなります。一番上も現状はホルンですが、さらに高いレベルのチームを将来的に、欧米あたりで運営できればというビジョンを持っています。

 -もっと短いスパンで、本田選手はこのプロジェクトを通し、日本サッカーに何をもたらそうと思っているのでしょうか

 神田氏 ひとつは、育ててくれた日本のサッカー界への恩返しという面もあるでしょう。ただ、本田はよく「世界に、早いうちからどんどん出て行ってほしい」と口にします。本田自身の欧州移籍(名古屋→VVV)は21歳で「遅すぎた」と今もよく言っていますから、そういった道筋をつけたいという思いがあるようです。

 -本田選手がホルンでプレーする可能性はありますか

 神田氏 今はまだ半分冗談ですが、私は5年後、目標である欧州CL出場が決まったら十分な金額でオファーを出すと伝えています。本田はそれを聞いて笑っているだけですが…。笑っていられないオファーが出せる、そんなクラブにしなければならないという使命感をもって運営にあたります。

 -最後に、長く安定的なクラブ運営と目標の「5年でCL」は相反するもののように感じますが、いかがですか

 神田氏 本田の性格から来るものだと思いますが、モットーは「思い立ったらスピード感を持って当たる」ということです。これで痛い目に遭うこともあると思いますが、それが彼の長所であり武器であると思います。最近はよく「何かを実現するために、とにかくやってみる以上の優れた手段はない」と言っています。このプロジェクトを貫く思いは、本田の「とにかくやってみる精神」ですね。(聞き手=八反誠)