セリエAで19日、森本貴幸の所属するカターニャは同じシチリア島に本拠を置くパレルモを迎えたダービー戦に2-0で快勝した。球際の粘り強さや激しい運動量で宿敵をねじ伏せ、武骨さを愛する地元サポーターを歓喜させた。

 フル出場した森本は「応援がすごかったので、どうしても勝ちたかった」と興奮気味に話した。約23億円の選手人件費はインテルやACミランの6分の1程度。財政規模の小さいクラブの快進撃を熱狂的な観客が支えている。

 セリエAではファン暴動の問題が絶えない。今季は8月31日にナポリの過激サポーターが暴徒化してアウェー全試合の入場禁止処分を科された。ただ、試合に関連した傷害事件数は昨季、その1季前と比べて6割減少した。行政主導で取り締まりを厳しくしたからだ。

 転機となったのが、競技場周辺で起きた暴動の鎮圧に当たった警察官が死亡した昨年2月のカターニャ-パレルモだった。カターニャは事件後、しばらくホームスタジアムでの試合開催を禁じられた。処分は解けたが、今月19日の同じカードは競技場周辺の数十メートルごとに警官が配備される厳戒態勢だった。

 地元サポーターにも汚名返上の意志がうかがえ、スタンドからは過激な横断幕や発炎筒が消えた。政府の指示でパレルモのサポーター集団を閉め出したアウェー席には、サッカースクールの生徒たちを無料招待した。

 実際にはパレルモのファンも来場していたが、騒動は報告されなかった。カターニャのプルビレンティ会長は「徐々に正常化に向かっている。近い将来、双方のファンが普通に観戦できるだろう」と期待した。(共同)