【ロンドン(英国)=春日洋平通信員】ACミランに期限付き移籍中のイングランド代表MFデビッド・ベッカム(34)が14日、イタリア・ミラノで行われたキエボ戦で左アキレス腱(けん)を断裂した。全治5~6カ月の重傷で、6月に開幕するW杯南アフリカ大会出場は事実上消滅。イングランド史上初のW杯4大会連続出場と、同国史上最多125キャップの夢も幻に終わった。5月に35歳を迎える年齢から、現役引退の危機にも立たされた。ベッカムは15日にフィンランド・トゥルク入り。現役続行へ一縷(いちる)の望みを託し、世界的権威のサカリ・オラバ医師の執刀で手術を受ける。
ベッカムが悪夢に襲われた。キエボ戦の後半43分。パスを受け、体をターンさせた瞬間、左足から力が抜けたようにバランスを崩した。右足1本で跳びはねてピッチ外へ出た。そこでしゃがみ込み「It,s
broken!(切れた)
It,s
broken!(切れた)」と絶叫。両手で頭を抱え、涙を流しながらタンカで運ばれた。レオナルド監督が「瞬間的にアキレス腱が切れたと分かったようだ」と言えば、DFアバーテは「更衣室で泣いていた」と明かした。
英メディアは医師の所見として「全治5~6カ月」と報じた。英国史上初の4大会連続のW杯が消滅した。昨年12月、イングランド代表のカペッロ監督が「ベッカムはプロ精神のかたまり。コンディションがよければ(W杯に)連れて行く」と公言。その意に沿うようにベッカムは、昨季に続くオフ返上でミランへ期限付き移籍。所属先のMLSギャラクシーとミランの折り合いをつけるため、自らのポケットマネーで数億円と言われる差額を埋め合わせた。そして家族を米国に残し、ミラノへ単身赴任。W杯への執念だった。
カペッロ監督は「どうやらW杯はアウトだ。ベッカムは偉大なプロ選手であり、W杯出場のために全力で準備を進めてきた。だからこそ、彼が出場できないのは大打撃だ」との声明を発表。14日の試合後には電話連絡し、全面サポートも約束した。また、ベッカム本人も15日に公式サイトで「負傷で心が動転しているけど、早期の完全回復を願っている」と声明を出した。
15日午後にはミラノからフィンランド南西部トゥルクに入り、病院へ移動し、同日か16日朝に手術を受ける。オラバ医師は昨年10月にはアキレス腱を断裂したイタリアのスキー選手フィルを手術し、バンクーバー五輪に出場させた。しかし、今回のベッカムは5月で35歳を迎える。しかも強烈な右足キックを武器とするだけに、全体重が強くのしかかる左足の故障は致命的だ。
英メディアは、ベッカムの広報担当の「この負傷から引退を考えていない。完全復帰を目指す」というコメントを伝える一方で、同国協会のフィジオセラピストの「もうトップフォームには戻らない」という衝撃的なコメントも紹介。今回の手術は「現役続行にいちるの望みを託した賭け」との見方を強めている。
積み上げたキャップ数は115。親善試合、W杯決勝までの7試合を加えれば、ピーター・シルトン(70~90年代のGK)の持つ史上最多125キャップ到達に、優勝で花を添えるという夢もあった。そこに起きたミラノの悲劇-。南アフリカを彩るはずだったスーパースター、ベッカムのサッカー人生がW杯イヤーに暗転した。
[2010年3月16日9時20分
紙面から]ソーシャルブックマーク


