陸上女子3000メートルと1万メートルの世界記録保持者で1996年アトランタ五輪の5000メートル金メダリスト、王軍霞さん(43=中国)が過去に組織的なドーピングを告白した手紙の存在が分かり、国際陸連が事実関係の調査に乗り出した。5日付の香港紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。

 王さんは90年代に馬俊仁コーチが率いて女子中長距離で旋風を起こした「馬軍団」の元エース。95年に「大量の違法薬物を何年も服用させられたのは事実だ」と手紙に記し9人のチームメートとともに署名していた。これが今月になって中国のインターネット大手「テンセント」のサイトに掲載された。

 国際陸連の広報担当者は「まず手紙が本物であることを確かめなければならない」と述べ、中国陸連に協力を求めたと明らかにした。また「世界記録をつくった選手が禁止薬物などの使用を認めた場合、世界記録ではなくなる」との見解を発表した。

 王さんは93年の世界選手権1万メートルで優勝した後、指導法などで対立し馬コーチと決別。手紙には「私たちは人間であり、家畜ではない」「この手紙で祖国の名誉を傷つけ、金メダルの価値を落とすことを心配している」といった苦悩も記されている。

 テンセントによると、手紙は95年に馬軍団の薬物疑惑を調べていた中国人作家に送られた。作家は98年に「馬軍団調査」と題した本を出版したが、薬物疑惑については出版社の意向で削除された。本は削除部分を盛り込んで昨年再出版され、この作家が今月テンセントに手紙の写真を渡した。