<陸上・ダイヤモンドリーグ第10戦アニバーサリーゲームズ最終日◇23日◇ロンドン>

 男子5000メートルで地元イギリスのモハメド・ファラー(33)が12分59秒29の今季世界最高記録で優勝。五輪連続2冠に向けて順調な調整ぶりを見せた。女子200メートルでも金メダル候補のダフネ・シパーズ(24・オランダ)が22秒13で圧勝。だが、女子100メートルではシェリー・アン・フレイザー=プライス(29=ジャマイカ)が3位と敗れ、五輪3連覇に黄信号がともった。

 「スタンドの観衆から素晴らしいサポートをもらいました」

 3000メートルから独走したファラーが“モボット”ポーズでフィニッシュしたのは、地元ファンへの感謝の気持ちからだった。頭上に両手でMの字をつくる“モボット”は、4年前のロンドン五輪でファラーが5000メートル、1万メートルの2冠となったときに、ウサイン・ボルト(29=ジャマイカ)の弓を引く“ライトニング・ボルト”ポーズと人気を二分した。

 2011年のテグ世界陸上はスパートのタイミングを見誤って1万メートル2位と敗れたが、翌年のロンドン五輪ではその反省を生かして2冠を達成。その後の13年、15年の世界陸上でも連続2冠を続けている。

 長距離の五輪連続2冠は過去にも例があるが、ファラーがリオ五輪でも2冠を達成すれば五輪&世界陸上で獲得した金メダルは9個となり、長距離選手では史上最多となる。

 「今日はリオ五輪前最後の実戦でした。それを思い出がたくさん詰まった地元で走ることができる選手は、一握りしかいません」

 ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会は、ファラーにとって最良の壮行レースとなった。

 ロンドン大会は男子200メートルに優勝したボルト、棒高跳びのルノー・ラビレニ(29=フランス)、三段跳びのクリスチャン・テイラー(26=アメリカ)、女子円盤投げのサンドラ・ペルコビッチ(26=クロアチア)と、ロンドン五輪金メダリストたちが五輪連覇に向けて順調なところをアピールした。

 その一方で苦戦を予感させたのが、女子100メートルで五輪2連覇中のフレイザー=プライスである。得意のスタートダッシュで少ししかリードできず、中盤で逆転を許して3位。優勝したマリージョゼ・タルー(27=コートジボアール)に0・10秒差の11秒06だった(自己記録は10秒70)。

 それでもフレイザー・プライスは、いつものように泰然としていた。故障の影響で出遅れているが、そのことについて質問が出ると次のように答えている。

「長い旅路(人生)は何が起こるか予想できません。プラン通りに進まないこともありますが、故障も旅路の一部に組み込まれていることなのです」

 ボルトと同様に五輪&世界陸上での集中力、勝負強さは間違いなく世界一。「旅路の先に向けてハードワークを続けます」と話した。

 ◆今季の女子100メートル

 リオ五輪の日程は女子100メートル決勝が大会2日目で、ボルトが3連覇に挑む男子100メートル決勝よりも1日早く行われる。フレイザー=プライスが3連勝を達成すれば、トラック種目では五輪史上初の快挙となる。

 だが残り3週間で、フレイザー=プライスの鋭いスタートダッシュが復活しなければ混戦となりそうだ。ジャマイカ選手権優勝のエレイン・トンプソン(24=ジャマイカ)、全米選手権優勝のイングリッシュ・ガードナー(24=アメリカ)ら今季10秒7台で走っている5人と、200メートルとの2冠を狙うシパーズら候補は多い。

 そこにダイヤモンドリーグ・ロンドン大会優勝のタルーも加わってきた。昨年までは11秒02が自己記録の中堅選手だったが、ロンドン大会で自身初めての10秒台となる10秒96を予選、決勝と連発。ともに向かい風の悪条件だったことから、10秒8前後の力はあると推測できる。

 五輪史上初の3連覇か、新たな女王が誕生するのか。女子最速決戦が熱い。