突然の引退表明だった。右ひざ痛で途中棄権したゲブレシラシエが、レース後の記者会見で「引退を考えたことはなかったが、きょうがその日だ」とコメント。司会者が「もう走ることはないのか」と確認すると、涙ながらに「イエス」と答えた。

 大会の広報担当者によると、右ひざは約2週間前の練習中に痛め、前日の検査で患部に炎症が起き、水がたまっていることが判明した。レースは途中まで先頭集団で走ったが、25キロ過ぎのクイーンズボロ橋で減速すると、ひざをかばいながら走るのをやめたという。

 2007年9月のベルリン・マラソンで2時間4分26秒の世界記録を樹立し、翌年の同マラソンで2時間3分59秒に更新した。トラックの5000メートル、1万メートルなどを含めると27度の世界新記録をマークしてきたが、「皇帝」ももう37歳。超一流であるがゆえに、自らの限界を敏感に感じ取ったのかもしれない。