<出雲全日本大学駅伝>◇11日◇島根・出雲大社前~出雲ドーム前(6区間、計44・5キロ)◇出場22チーム

 名門早大が14年ぶりに駅伝タイトルを獲得した。「3大駅伝」の開幕戦となる大会で、6人中4人が区間賞をマークするなど2時間10分5秒で2位日体大に1分差以上をつける快勝。96年大会以来、2度目の優勝を飾った。長らく低迷が続いていたが、箱根駅伝の名ランナーだった渡辺康幸監督(37)が就任7年目で復活Vへ導いた。駒大が3位、箱根連覇の東洋大は4位、3連覇を狙った日大は18位に終わった。

 早大は14年ぶりの駅伝タイトルを手にしても、胴上げを行わなかった。就任7年目で初優勝の渡辺監督は笑顔こそ見せたが、感情の針は振り切れなかった。「出雲だけが目標じゃない。選手も分かっている」と戦いが完結していないことを強調した。

 3大駅伝開幕戦で力の差を見せた。全6区間に1万メートル28分台を誇る走者をそろえた。1区矢沢がケニア人留学生の山梨学院大コスマスを残り1キロで振り切って首位に浮上。3区八木は独走状態を築いた。今年の箱根駅伝を新型インフルエンザにかかり欠場した4区佐々木が17分54秒で区間新記録と圧巻の走り。1年生の大迫、志方が伸び悩んだが、総合力でカバーした。

 今年の箱根駅伝は優勝候補だったが、7位惨敗。渡辺監督は「何かを変えないといけない」と思いを新たにした。まずは10キロ減量で体重を70キロに絞り、模範を示した。春からは「(駅伝タイトルを)3つ取りに行く」と就任7年目で初めての大号令をかけた。殻を破りきれない矢沢を夏にはチームから離脱させて欧州へ派遣。「世界のレースを見させて、いかに国内で低いレベルでやっているか分からせたかった」とチームに新しい風を吹き込んだ。

 監督が変われば、選手も変わる。八木は8月の合宿で月間1000キロの走破を初めて達成。過去6度の3大駅伝で1度もなかった区間賞をこの日初めて獲得した。それでも「早大の長い歴史に名を残せたのはうれしい。でも自分たちの時代はこれから始まるし、強い早大を見せたい」と欲は満たされなかった。

 渡辺監督も思いは同じ。「(箱根連覇の)東洋大は柏原が出れば変わる。(11月)全日本大学駅伝で同じ横綱相撲ができてこそ本物だし、(1月)箱根駅伝につながる」。3冠の野望が早大を奮い立たせる。【広重竜太郎】