<第66回びわ湖毎日マラソン>◇6日◇滋賀・皇子山陸上競技場発着

 先週の東京マラソンで日本人トップの3位に入り、今夏の世界選手権(韓国・大邱)代表に決まった川内優輝(埼玉陸協)に続き、また異色のランナーが世界へ飛び出した。

 一般参加の堀端宏行(24=旭化成)が、2時間9分25秒で日本人トップの3位に入り8月世界選手権(韓国・大邱=テグ)の出場条件「9分29秒以内」をクリア。広州アジア大会男子マラソン銀メダリストの北岡幸浩(28=NTN)、川内に続く3人目の内定。189センチという日本長距離界では異例の長身ランナーが、代表切符をつかんだ。

 男子選考レースはこれで終了し、15日の日本陸連理事会をもって代表5人が発表される。

 日本マラソン界に、また新星が現れた。今度は189センチというビッグな長身ランナー堀端だった。苦痛に顔をゆがめながら、皇子山競技場の400メートルトラックを1周半。中本の追撃に遭うも日本人トップを守り切った。出場条件を4秒クリアし、自己記録を3分22秒も短縮する激走だ。ゴール後は両手を地面に着き、息も絶え絶えだった。

 堀端

 競技場に入った時、(電光掲示板で)残り80秒と分かった。そこからは必死。後ろはまったく気にならなかった。日本人トップなんて自信もなかったし、考えもしなかった。

 試練は31・8キロ付近。並走していた箱根駅伝で「山の神」と呼ばれた今井の足と接触し、両足が絡まった。09年の東京でもほかの選手と接触。その時は転倒した上に靴を破いたが、今回は前のめりになりながらもこらえた。「一瞬ダメかと思ったけど、すぐに負けてたまるか、と気持ちが切り替わった」。12月に右足付け根部分を故障し、ここ1カ月の急仕上げ。出場は10日前に決めたという若者が、まさに無欲の勝利をつかんだ。

 日本長距離界にあって、身長189センチは異例のサイズだ。熊本・八代東高時代は県大会止まり。それでも宗猛監督から「素材として大化けするかも」と勧誘され、旭化成入り。ストライドの大きな走りで「高岡2世、頑張れ」とハッパをかけられる。食欲旺盛でベストから3~4キロ重い72キロでの出場。宗監督が「競技欲が強くなれば、食欲も抑えられる」と願う発展途上の若者だ。

 世界選手権の抱負を問われた堀端は「体を絞って臨みたい」。シンデレラボーイは、どこまでも夢見心地だった。【佐藤隆志】