プロゴルファーの石川遼(17=パナソニック)に、「五輪で金メダル」の夢が加わった。国際オリンピック委員会(IOC)は13日、ドイツ・ベルリンで理事会を開き、2016年夏季五輪に追加する2競技に、ゴルフとラグビー(7人制)を候補に選んだ。10月9日のIOC総会(コペンハーゲン)での投票で正式決定するが、2競技とも過半数を得て承認される見通し。ゴルフ界はもちろん、石川にとって、メジャー制覇に加えて、五輪金メダルという新たな大目標が生まれた。野球とソフトボールの復帰はならなかった。

 1世紀以上の歳月を経て、ゴルフに五輪復帰への道が開けた。全米プロ選手権出場で米国に滞在中の石川は「日本代表でプレーできれば、最高だと思います。入場行進もしてみたい」と早くも五輪出場を新たな目標に加えた。7年後の16年五輪はプロゴルファーとして脂の乗り切った24歳で迎える。メジャー大会優勝に加えて、金メダル獲得の夢も広がった。

 国際ゴルフ連盟(IGF)が想定する出場資格は(1)世界ランキング15位以内は無条件で出場(2)16位以下は各国2人ずつ―。現状でも43位の片山晋呉に次ぐ日本人2番目の59位の石川は出場資格を持つ。それだけに「五輪に出場してサッカーなどいろいろなスポーツの選手とコミュニケーションを取れたら大きな経験になる」と現実的にとらえる。

 ゴルフ界にとっても五輪復帰は悲願だった。1900年の第2回パリ大会、04年の第3回セントルイス大会は正式競技だった。その後、競技から外れ、96年アトランタ、00年シドニー大会で復活を目指したが失敗。12年ロンドン大会の競技入りを狙った05年のIOC総会でも涙をのんだ。

 02年ごろまでは日程が重なるプロツアーの反対が強かった。しかし、ウッズらトップ選手らが五輪への興味を示したことで流れが変わった。IGFも米国、欧州、日本などのゴルフツアー機構によるPGAツアー国際連盟とともに運動を展開。今年4月にはウッズ、ニクラウス、宮里藍ら、世界のトップ選手18人が、自国のIOC委員あてに、五輪への思いを込めた書簡を送った。

 6月にスイス・ローザンヌで行われたIOCへのプレゼンテーションに参加した日本女子プロゴルフ協会の樋口久子会長も「ゴルフが五輪の理念に準じた競技として国際的に認められた歴史的瞬間だと思う。多くのゴルファー、子どもたちが夢を持ってくれることにつながることを期待している」と話した。

 ゴルフの競技人口は国内で1000万人、世界で6000万人を超えるといわれる。一方で富裕層のスポーツとのイメージも強かったが、石川、宮里藍ら人気選手が五輪に参加すれば注目度はさらにアップする。ジュニア層などへの底辺拡大も期待できる。「日本代表になることは難しいかもしれないが、それを目指すだけでも、モチベーションが上がる」。五輪出場という新たな夢は、17歳のさらなる進化にもつながりそうだ。