新境地でつかんだ1勝だ。2位から出た服部真夕(27=LIXIL)が5バーディー、1ボギーの69で回り、通算14アンダー、205で今季初勝利を挙げた。5月に師匠の岡本綾子から独り立ちを決意。アプローチイップスを受け入れて自慢のショットでカバーし、3年ぶりとなるツアー通算5勝目を逆転で飾った。

 涙は出なかった。服部は「涙より、やったという達成感が強かったですね」と言った。1、2番の連続バーディーでトップに立つと、9番パー5で底力を見せた。第4打をグリーン奥のカラーからパターで転がした。ピンまで25メートル、ラインはきつい下り。「寄せるというよりグリーンに止めるイメージ」で4メートルのオーバーに抑え、パーパットもねじ込んだ。「いやー、大きかったです」と振り返る。

 5月、岡本に「自分でいろいろ考えながらやっていこうと思います」と伝えた。07年のプロテスト合格から教えをたたき込まれてきた“一番弟子”だが「岡本さんに甘えていた部分があって、自分で考えるということをあまりしていなかった」。そんな服部の決断に理解を示してくれた師匠に「本当にお世話になってきて、いろんな部分で心配をかけてしまったけど、こういう風に結果を残せたので、感謝を伝えたい」と、あらためて口にした。

 13番パー5、第2打がグリーン左のラフに入った。2年前から軽いアプローチイップスに悩まされてきた。昨季パーオン率は日本人トップの3位に対し、リカバリー率が規定ラウンド数を満たした選手で最下位の92位。第2日の10番ではラフからのアプローチで「2度打ち」もした。だから、自分で考えて前日10番で選んだ58度のウエッジではなく、ピッチングウエッジを抜いた。ピンまで3メートルにつけ、バーディーを奪った。

 「悪い自分を認めないのは現実逃避。アプローチがダメでも勝てる。ショットでカバーすればいい。アプローチはいつ直るか分からないから、これからもお付き合いしていきますよ」。晴れやかに言ってみせた。【亀山泰宏】