リオのメダル候補が1人消えた。男子ゴルフの松山英樹(24=LEXUS)が3日(日本時間4日)、米オハイオ州アクロンのファイアストーンCCで行われたブリヂストン招待最終ラウンド後、8月のリオデジャネイロ五輪出場辞退を表明した。世界ランク日本勢1番手につけ、出場権獲得は確実となっていたが、ジカ熱や治安に対する懸念、虫刺されに対するアレルギー反応などから、苦渋の決断を下した。

 「やめます。出ません」。松山はきっぱりと言い切ったが、心は割り切れていなかった。「難しいですけど。いい選択かどうかは分からないけど。もう時間もないですし、早めに決断した方がいいと。やめた方がいいと」。11日付の世界ランクで代表が決まる。大会開幕まで1カ月。自らの辞退で出場枠が回ってくる選手のことを考えれば、ギリギリのタイミングだった。

 ジカ熱は大きな理由の1つだが、それだけではない。「ジカ熱もありますし、自分が虫に刺された時のアレルギー、反応の仕方がまだ良くなっていない」。13年9月、フジサンケイ・クラシック最終日に虫に刺され、ほおが腫れ上がった状態で会見に臨んだこともあった。6月の全米オープン直前にも右腕を刺されて変調をきたし、黒いテープを巻いていた。「そういう不安があるところでは、まだプレーは避けた方がいいのかなと。行って刺されて、腫れてプレーできないというと、もっと良くないと思う。ジカ熱に加えて治安の問題もある」と説明した。

 メジャー制覇を目標に掲げる中で、112年ぶりに復活する五輪競技としてのゴルフの位置付けは難しかった。日本のゴルフ界活性化、そして4年後の東京五輪につなげる意味で、リオに行く価値はあると考えていた。しかし、懸念を払拭(ふっしょく)しきれなかった。現地の情報提供など、覚悟を決めるだけの後押しもなかった。「五輪に出るのが一番いいのかもしれないけど、そこまでリスクを背負っていくのは、という感じはある」と言った。

 メダル候補が自らの都合で五輪出場を辞退することは、日本のスポーツ界では極めて異例のことだ。それでも、欧米ツアーのトップ選手が続々と不参加を表明する中で、悩み抜いた末の選択。残る2つのメジャーとツアーでの戦いに全力を傾けることになる。

 ◆ジカ熱 蚊が媒介するウイルス感染症。症状は発熱や発疹、目の充血などで、約8割の人で症状が出ないとされる。新生児の小頭症のほか、感染者本人に手足のまひを伴う病気「ギラン・バレー症候群」を引き起こす可能性も指摘されている。ワクチンはなく、予防には蚊の対策が不可欠。