プロ4年目の松森彩夏(22=スターツ)が通算12アンダー204で、待望のツアー初優勝を果たした。1打差3位から出て、5バーディー、1ボギーの68で回って逆転勝ち。昨季2位2回の悔しさから、オフの体重増量作戦で安定感を増し、アプローチとパターの成長が光った。将来は米ツアー進出を狙う新ヒロインが誕生した。4打差2位は笠りつ子(28)だった。

 松森は50センチのウイニングパットを沈めると、目元をぬぐった。「気持ちが高揚しちゃって」。だが、大拍手を浴び、すぐに晴れやかな笑顔が戻った。「今日は1度も焦ることなく、淡々とプレーできた」。堂々とした戦いぶりだった。

 パットが危なげない。3番で8メートルを放り込み、残り4個のバーディーはすべて3メートル前後を決めた。昨季はショットは申し分ないものの、小技での詰めを欠いて勝利を逃した。「一番練習したのはアプローチとパター。間違っていなかった」。今回はかつて横峯さくらのバッグを担いでいたキャディーのジョン・ベネット氏(ニュージーランド)とのコンビ。パットのスピードにばらつきが出ると、ラインの読みも難しくなると指摘され、タッチをそろえることに徹したのが奏功した。

 もう1つ転機があった。2週前に日本女子プロ協会の小林浩美会長(53)から「アプローチは全部入れるつもりで」と言われ、「それまでよりもっと繊細に」カップまでのラインや傾斜まで読んでから、打つようになった。この日の1番も18番もグリーン奥に外しながら、しっかりパーで切り抜けたのが大きかった。

 身長170センチのスレンダー美女として注目される中、オフには1日5食で5キロの体重増。母亜規子さん(46)はタンパク質重視を心掛け、鶏肉だんごのスープを大量につくっては、飽きないよう味を変えて出したという。「寝る前に体重を量って、足りないとうどんやおにぎりを食べていました」(亜規子さん)。その成果は「安定感が増しました。またオフに増やしたい」(松森)。55キロの体重を60キロにまでしたいという。

 すべて将来の海外進出のため。次の標的は勝てば米ツアー参戦権が得られる11月のTOTOジャパン・クラシックだ。「自分の力を試したい」と言い、勝ったら「もちろん(米国に)行きたい!」と大きな瞳を輝かせた。【岡田美奈】

<松森彩夏(まつもり・あやか)アラカルト>

 ◆4歳で始める 1994年(平6)5月19日、東京生まれ。妹杏佳(きょうか、21)も単年登録のプロ、この日下部ツアーで11位。4歳の時に祖父堤亘正さん(79)の手ほどきでゴルフを始める。この日、堤さんも応援に来場。「おじいちゃんに優勝を見せるのが、1つの夢だった」。

 ◆新幹線で兵庫通い 小学生の時に一時、兵庫県に住み、江連忠のアカデミーに通い、上田桃子らを見て影響を受ける。東京に戻っても月に1回ほど姉妹でレッスンに通った。

 ◆初シード 08年日本ジュニア9位、10年関東ジュニア2位。日大高卒業後、13年プロテストに一発合格。15年フジサンケイ・レディースは優勝争いも2位に終わり「帰りの車の中で号泣してました」(母亜規子さん)。同年の賞金ランク40位で初シード獲得。

 ◆東京五輪 20年東京五輪の会場の霞ケ関CCは08年日本ジュニアの会場だった。「霞ケ関CCは思い出の地」と、東京五輪出場を狙う構え。