日本シンクロが、世界のメダルへ跳んだ。予選トップの日本代表は、チームFR決勝で4回のジャンプを完璧に成功。チーム最年長の中村麻衣(26=井村シンクロク)が昨年11月からの「ジャンパー合宿」の成果を見せた。世界選手権(7月、ロシア)で目指す8年ぶりのメダル獲得へのカギを握るジャンプ。水中から空中へ、来年のリオデジャネイロ五輪に向けてマーメイドが華麗に舞う。

 水中で塊となった8人の中から、中村が水面に顔を出す。吉田の肩で踏み切ると、プールの天井目指して高く舞い上がる。スタンドの視線を独り占めにし、1回半ひねって着水。この日のFRで4回ジャンプした中村は「予選よりも良かったけれど、次はもっと高く跳びたい」と話した。

 チームの華、リフト。チーム一丸となって持ち上がった1人が、高く飛びだして空中で演技する。得点は出るが、失敗のリスクもある大技だ。辰巳のプールは水深2メートル。下に足がつくとペナルティーをとられる。深く潜れないだけに浮力が使えず、リフト技は難しい。それでも、日本代表は完璧にすべてを成功させた。

 「良くなったでしょ」と井村ヘッドコーチは満足そうに話した。得点源となるジャンパーは、海外ではスペシャリストの役目。ところが、これまでの日本は小柄な選手の仕事の1つにすぎなかった。高得点を得るために、井村コーチはスペシャリスト養成を決断。昨年11月から「ジャンパー合宿」をスタートさせた。

 「体操協会に協力してもらって、本格的に教えてもらった」と井村コーチ。ナショナルトレセン内の体操練習場で、体操メダリストを育てるコーチに指導を受けた。今年4月まで4回。チームのテクニカルルーティンで跳ぶ丸茂は「全身で跳ぶことを教わった」と言えば、中村は「体幹が鍛えられ、回転が楽になった」と、1日200本もの猛練習の成果を口にした。

 昨年のW杯では中国に次ぐ2位。王者ロシアとスペインは出ていなかったが、そのスペインより上のウクライナに勝って世界3位が現実になった。「世界選手権では当然、メダルを目指す」と井村コーチ。「世界選手権ではもっと高く、きれいに跳ぶ。メダルを取って、来年のリオにつなげたい」。中村がジャンプする先には、04年アテネ大会以来12年ぶりのチーム五輪メダルがある。【荻島弘一】