ラグビー日本代表のFB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)が、世界最高峰リーグ「スーパーラグビー(SR)」のレッズ(オーストラリア)入りを決意した理由を明かした。5日、浜松市内で入団発表会見を行い、レッズの本拠地ブリスベンが「運命」の場所だったこと、また家族のことを考えての挑戦だと語った。SRのシーズンは来年2~8月で、契約期間は1年。五郎丸はヤマハ発動機に所属したまま、国内シーズン終了後の2月7日からレッズに合流する。

 会場には10台以上のテレビカメラが並び、約130人の報道陣が詰めかけた。ダークグレーのスーツにネクタイ姿の五郎丸は、時折笑顔を見せながらも、言葉に強い覚悟をにじませた。

 「失うものはない。僕は英語も堪能じゃないし海外経験もない。ゼロからチャレンジを楽しみたい。たとえ会社(ヤマハ発動機)が送り出してくれなくても、レッズに行こうという強い気持ちがあった」

 レッズのあるブリスベンは「運命」の地だった。佐賀工3年で高校日本代表に選ばれ、初めて海外遠征をした際に最初に行った。オーストラリア-南アフリカ戦の前座試合でプレーした後、世界一流の攻防を目の当たりにした。「生で見て、世界のラグビーを意識し始めた。運命もある」。その試合翌日、空港で一緒に写真を撮ってもらったのが、当時オーストラリアを率いたジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)だった。そのジョーンズHCからW杯米国戦の前にオファーを知らされ、五郎丸は「縁を感じた。断る理由はなかった」。

 日本代表を軸に編成する「サンウルブズ」でSRに参戦する選択肢もあったが、家族のことを考えてレッズを選んだ。「4年間ずっとジャパンでやって、家族の時間があまりに少なかった。レッズなら家族と一緒に行ける」。23歳の若さで結婚したのも、自身がプレーしているところを子どもに見せたかったから。現在は5歳と2歳の男児を持つパパだ。合宿と遠征が続くサンウルブズと違い、レッズなら毎日のように家に帰れるし、オフは家族と過ごせる。「(ヤマハ発動機の本拠地の)磐田と同じで(ブリスベンは)海が近い。趣味の釣りをしたり、家族とも楽しい時間を過ごしたい」。加入の決め手は、そこにもあった。

 日本出身選手でのSR挑戦は6人目。ただ実力を買われてチームからオファーがくるのは初めてだ。レッズは主力だったFBオコナー、キッカーのSOクーパーがいずれも退団することが決まっており、かかる期待は大きい。「あまりしゃべりが上手じゃないので、プレーでアピールできれば」。W杯の次は世界最高峰リーグで、黄金の右足を振り抜く。【岡崎悠利】

 ◆五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)1986年(昭61)3月1日、福岡市生まれ。3歳でラグビーを始め、小4から小6はサッカーでも活躍。佐賀工高では3年連続の花園出場、早大では大学選手権を3度制覇した。ヤマハ発動機では広報宣伝部に所属。大好物はしょうゆで食べる豚カツ。家族は妻、5歳と2歳の息子が2人。185センチ、99キロ。代表キャップは57。

 ◆スーパーラグビー 南半球のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカに拠点を置くチームが争うリーグ。96年に12チームで始まり、06年に14チームに、11年から15チームに拡大して現在の名称になった。来年はサンウルブズや、アルゼンチンのチームなどが新たに参入して18チーム。