リオデジャネイロ五輪レスリング女子53キロ級で4連覇を逃し、銀メダルの吉田沙保里(34=至学館)が24日、コーチデビューした。

 全日本チームの合宿がスタートし、初日は多くの報道陣が集まり吉田のコーチ初日に注目した。選手兼コーチとして新しいスタートを切った吉田は、テレビカメラの放列を向けられながら約2時間、女子チームのコーチとしてテキパキとした動きを見せた。

 練習開始時に、日本レスリング協会の栄和人強化本部長が新体制を選手に紹介。海外遠征中の選手に同行したコーチをのぞく20人の新体制となり吉田は「今までは選手でしたが、コーチの立場としても頑張っていきたい。20年東京五輪へ力を合わせてやっていきたいです」とあいさつした。

 ランニング、アップをこなしたが、男子コーチとの2人組のトレーニングに移ると「すごい(汗で)濡れててやだああ。それにベタベタしてる」と、大声での甘えたコメントで場の雰囲気を明るくした。その後は53キロ級の向田に片足タックルの動き方を懇切丁寧に指導するなど、無駄のない動きを見せた。

 練習が終わると吉田は取材に応じた。「複雑な感じがする。これだけマスコミの方も集まっていただいたので、コーチしているところを見せた方がいいのかなと思いました。ただ、現役の時も教えながらやってきましたので。また来年から合宿にも入っていきたいですし。今日はペンも持たずに会議にも出ました。こうやっていろいろ決まっていくんだと勉強になりました」。また、指導については「隠すことは絶対にないので。これまでも隠すことはしてないので。日本で五輪がある、絶対に出る選手には金メダルを取ってほしい。平等に教えていきたいです。私は日本人には負けてないので、私を倒す選手が出てきたらうれしいです」と、いずれ教え子に超えてもらいたい本音もちらりとのぞかせた。

 練習最後のあいさつでは選手を前に「もっと元気よくないと将来性はないです」と、きっぱりと言い切り、その瞬間はレスリング場の空気も引き締まった。吉田の存在感は現役時とまったく変わらず、コーチとしてもチームの中心として光り輝いていた。