<競泳:パンパシフィック選手権>◇4日目◇21日◇米カリフォルニア州アーバイン

 男子200メートル平泳ぎで、04年アテネ五輪、08年北京五輪2冠の北島康介(27=日本コカ・コーラ)が、今季世界最高の2分8秒36で金メダルを獲得した。世界記録を上回るハイペースで最初の50メートルを折り返し、そのままトップを譲らず2位のリカードに1秒61差をつけ圧勝。惨敗した4月の日本選手権決勝から、なんと4秒以上タイムを縮めた。100メートルと合わせて2冠を達成。

 想像を超えた「復活力」だ。100、200メートルともに、予選から1度もトップを譲らない今季世界最高で金メダル。あふれ出る自信からか、レース後には「もっとうまく泳げば、7秒台も狙えたかもしれない」と豪語。昨年の世界選手権でスプレンガーが高速水着で出した2分7秒31の世界記録更新の手応えさえ感じていた。

 最初の50メートルから一気に飛び出した。世界記録を出した時のスプレンガーを0秒04上回るスピードに、会場がどよめいた。「最後は(疲れで)少し体が浮いた」と、世界記録はならなかったが、北京五輪準決勝以来の2分8秒台。「今季初のいいタイムが出たので満足している」と、納得の表情を見せた。

 これまでとは大きく違った環境でつかんだ2つの金メダルだ。北京五輪後、五輪2冠を二人三脚で達成した平井伯昌コーチから離れ、米国の南カリフォルニア大に拠点を移した。日本と違い練習時間は量より質。午前だけで練習が終わることも多く、自主性を重んじ細かな技術指導はない。1人で泳ぎの映像を分析しながら、手探りで築き上げた。

 新たな方法に、さすがの北島もペースをつかめず4月の日本選手権は無冠に終わった。得意の200メートルでは後半大失速し4位に終わった。しかし、どん底からわずか4カ月で、日本選手権決勝から4秒以上タイムを縮めた。「自然な流れでこうなった。今までと違うスタイルでできていると思う」。今大会直前も、恒例だった代表の高地合宿に参加せず、拠点である南カリフォルニア大で調整した。

 北京五輪後、「また泳ぎたいと思わないと泳がない」と、約1年間、競技生活から離れた。五輪2冠に世界新もマークし、ロンドン五輪を目指すには、違ったモチベーションが必要だった。それが独り立ちだったのだろう。「もうマイナスからの(スタート)じゃない。次のことにトライしていく。今は本当に水泳が楽しい」。新生北島が、再び世界へのステップを踏み出した。