<卓球:全日本選手権>◇第6日◇17日◇東京体育館

 「森薗家」が躍動した。男子ダブルス決勝では、森薗政崇(19=明大)三部航平(17=青森山田高)組が岸川聖也(27)水谷隼(25)組に3-0で勝ち、2連覇。女子ダブルスではいとこの森薗美月(18)が四天王寺高の同級生の阿部愛莉(18)と組んで準優勝した。父同士が双子で元卓球選手という血筋を持つ。親が競技を始めるきっかけをつくった祖父が他界した直後の大会で、孫が発奮。今日18日の女子シングルスでは政崇の姉美咲(22)が初優勝に挑む。

 珍しい名字が、次から次に会場にアナウンスされていた。「もりぞの」。漢字では「森薗」。「園」ではなく「薗」は鹿児島県にルーツを持ち、全国でもまれ。それが日本一を決める舞台で、3人も。ちょっとしたフィーバーだった。

 男子ダブルス決勝前、政崇は落ち着かなかった。いとこの美月が、直前の女子ダブルス決勝で女王の石川・平野組と大接戦していた。「ソワソワしてましたよ。勝つんじゃないかと」。結果は惜敗だったが、今度は自分の番だった。三部と組んで、岸川・水谷組に向き合う。初優勝の昨年と違い、政崇が明大に進学し、組んで練習する時間は激減したが「リズム良く攻められた」。相性の良さは健在で、3-0で完勝した。

 政崇の父誠さんと、美月の父稔さんが双子。共に中学から社会人まで卓球を続け、それぞれの子供も同じ道へ。昨年12月2日、そのきっかけを作った祖父昭雄さんが、故郷の愛媛県で82歳で他界した。卓球好きで、子供を毎日教室まで送迎。生前は孫の試合が生きがいで、全国行脚。行けない時は誠さんが1ゲームごとに連絡するほどだった。

 息子同士は「中学ではダブルスもやっていたけど、けんかばかり」(誠さん)だったが、孫同士は支え合って成長した。小学生までは正月に集まればみなで卓球。美月がスランプの時は、美咲が誘って一緒に練習したり。一家で日本の頂点を目指してきた。

 この日は昭雄さんの遺影を誠さんが携え、戦いを見守った。1ゲームずつの連絡は、祖父から祖母和子さんに代わったが、その忙しさは増すばかり。美咲が準決勝に挑む今日も、故郷の愛媛へ電波は飛ぶ。【阿部健吾】

 ◆森薗政崇(もりぞの・まさたか)1995年(平7)4月5日、東京都生まれ。青森山田高から明大に進学。14年全日本大学総合優勝、チェコオープン・ダブルス優勝。世界ランク34位。