<ノルディックスキー:W杯複合>◇個人第12戦◇24日◇札幌・大倉山ジャンプ競技場(HS134メートル、K点120メートル)、後半距離(10キロ)

 14年ソチ五輪個人ノーマルヒル銀メダルの渡部暁斗(26=北野建設)が、今季3度目の表彰台となる2位に入った。前半ジャンプで124・5メートルと飛距離を伸ばせず11位と出遅れたが、得意の後半距離で追い上げた。前日は11位だったが、06年3月にW杯初出場した原点の地で復調気配を見せた。

 原点の地で日本勢のプライドを守った。渡部暁斗は、トップと1秒8差の2位でゴールに入るとスキー板を掲げ、ファンにアピールした。06年3月に初出場(19位)した札幌。前日(11位)は9年ぶりの自国開催で日本勢の表彰台がなかっただけに、エースとしての意地をみせた。「台に立てて本当に良かった。地元で結果を出せなかったら残念ですからね」と柔らかな笑みを浮かべた。

 前半ジャンプで124・5メートルを飛び11位。トップと1分21差でスタートした後半距離が真骨頂だった。残り3キロ過ぎで先頭集団6人に追いつき勝負はラスト1周(2・5キロ)。最初の上りでフレンツェルが抜け出し、フレッチャー(米国)とともにその後を追い勝負は3人に絞られた。

 ファンの待つ会場に戻ってくるとラスト300メートルでフレンツェルがスパート。前にいたフレッチャーが邪魔になり仕掛けが遅れ2位に上がるのが精いっぱいだったものの、自国開催で初の表彰台を引き寄せた。「集団で前が引っ張ってくれたのも良かった。展開に恵まれたのもあるし、スキーが滑ってくれた」と冷静に分析した。

 銀メダルを獲得したソチ五輪後、多忙を極めた。イベントなどをこなし「ほとんど練習できなかった」。今季開幕から優勝どころか年明けまで表彰台すらなかったが「耐えて耐えてきた。こういうシーズンがなければ課題も反省点も生まれない。4年後を見据えればいいと思う」と焦らず、18年平昌五輪へ確実に歩を進めている。

 忘れ物を取りに行く。今後はW杯には出場せず、欧州で合宿し、2月18日の世界選手権(スウェーデン)に向かう。前回13年大会では3種目で4位と屈辱にまみれた。「表彰台でみなさんを待っています」。復調気配のエースが、原点の地から世界へ加速度を上げていく。【松末守司】

 ◆渡部暁斗(わたべ・あきと)1988年(昭63)5月26日、長野・白馬村生まれ。白馬中-白馬高。06年トリノ五輪で個人スプリント19位。10年バンクーバー五輪は個人ラージヒル9位。14年ソチ五輪の個人ノーマルヒルで銀メダル。W杯通算5勝。173センチ、61キロ。