大相撲夏場所千秋楽の結びの一番で起きた両横綱の「ケンカ」が、土俵外に飛び火した。26日、東京・両国国技館で横綱審議委員会(横審)が行われ、両横綱への対応をめぐって北の湖理事長(元横綱)と横審の委員が対立した。朝青龍(27=高砂)の「ダメ押し」を否定し、反撃した白鵬(23=宮城野)だけを注意して終わらせようとした理事長に対し、横審の委員全12人が「両成敗にすべきだ」と猛反発。約40分にわたるトークバトルの末、横審に押し切られた理事長が、両横綱に注意することで決着した。

 今度は北の湖理事長と横審がにらみ合った。午後5時30分から始まった会議で、延々と激しい論争が繰り広げられた。理事長は会議前に白鵬の師匠、宮城野親方(元十両金親)を呼び、厳しく指導するよう注意。一方で朝青龍にはおとがめなしだった。この見解に横審が猛反発した。横審側によると、非公開で行われた会議では以下のようなやりとりが行われたという。

 北の湖理事長

 ビデオで繰り返し見ましたが、朝青龍の行為は故意のダメ押しではなく、勢いあまってのもの。だが白鵬の行為は流れとは違う。横綱としてあってはならないことなので師匠を呼んで注意をしました。朝青龍については、注意しません。

 横審メンバー

 それはおかしい。朝青龍のダメ押しがあったから、白鵬が怒ったはず。玄人目で朝青龍の行為がダメ押しではないとしても、両横綱が勝負がついた後に土俵上でにらみ合う行為自体が品格に欠ける。ケンカ両成敗にすべきでしょう。

 北の湖理事長の意見に、横審の12人の委員全員が反発した。しかし、理事長は「白鵬だけが悪い」と主張し続けたという。内館牧子委員が「朝青龍は出場停止になる問題を起こした後も反省が感じられない。今回のことも先に手を出した朝青龍により重い処分を下すべきではないか」と進言すると、理事長を含めた協会側は「前の問題については謝罪会見もしている」などと顔を紅潮させて気色ばんだという。

 夏場所で優勝した琴欧洲の来場所の「綱とり」についての論議をないがしろにして、熱い議論は40分間も続いた。最後は会議に参加した協会執行部の「やはり両方に注意すべきでしょう」のひと言で終結に向かった。意地を張るように横審の意見に納得しなかった北の湖理事長も、身内からの進言には首を縦に振るしかなかった。

 結局、協会の代表として北の湖理事長が両横綱と師匠を呼び、注意することで決着した。朝青龍の師匠、高砂親方(元大関朝潮)は入院中で同伴は無理だが、27日にも両横綱が日本相撲協会で、注意される方向になった。会議後、見解を覆された北の湖理事長はぶぜんとしたまま、報道陣に無言を通した。

 協会には取組後から「横綱同士がみっともない」という抗議が殺到。一夜明けたこの日は、報道を受けて「なぜ理事長は朝青龍をかばうのか」という批判の電話が相次いだ。昨年の朝青龍問題、時津風部屋事件などの対応でも批判された協会トップが、またも世論の空気を読めずに孤立してしまった。【柳田通斉】