武蔵川新理事長(60=元横綱三重ノ海)が、潔く頭を下げた。初日恒例の協会あいさつで、元若ノ鵬、元露鵬、元白露山を解雇した大麻問題を「すべて協会の責任」などと全面謝罪した上で、再発防止を誓った。不祥事直後も型どおりのあいさつを貫いた北の湖前理事長(55=元横綱)とは対照的な対応に、観衆から好意的な拍手と歓声が上がった。力士側も引き締まり、横綱朝青龍(27)は、新理事長が指示した「両手をつく立ち合い」で、東小結把瑠都(23)を退けた。横綱白鵬(23)も小結朝赤龍(27)に快勝した。

 弟子に厳しい「鬼の武蔵川」が、観衆に頭を下げた。十両取組の途中、横綱、大関、3役を引き連れて土俵に上がった。来場に対しての謝意を述べた後、顔を紅潮させたまま謝罪の言葉を並べた。

 「度重なる不祥事に関する責任は、すべて私ども日本相撲協会の責任にあります」「大相撲を愛してくださるすべての皆さまに(中略)心よりおわび申し上げます」。その後、再発防止への強い思いを続けると、ファンからは「頑張って~」「いいぞ三重ノ海」の声が飛んだ。

 1分48秒のあいさつのうり、55秒を大麻問題の謝罪にあてた。「2、3日かけて自分で考えた。まだ謝罪の言葉は足りないと思うが、精いっぱいの気持ちを出したつもり」。北の湖理事長時代から「あいさつ文の作成」を担当する協会職員も、文書を用意していたが、自分自身の言葉にこだわった。

 問題から顔を背けず、角界の再建に取り組む。北の湖前理事長は、朝青龍騒動後の07年秋場所初日のあいさつで、問題に一切、触れなかった。時津風部屋新弟子死亡事件の捜査が本格化した後の昨年九州場所初日でも「一連の件に関しましては、ご心配をお掛けしました」と述べるだけで、謝罪の言葉はなかった。そのたびにファンは失望の声を上げた。新理事長は就任翌日の9日から「協会あいさつでも、きちんと問題に触れる」と宣言していた。

 協会トップの毅然(きぜん)とした対応に、力士側も気持ちを引き締めた。大関千代大海は「理事長の言葉を受け、ファンからの『頑張れ』の声が飛んでうれしかった。我々も問題を受け止め、私生活から節度ある行動をしなければとあらためて思いました」と神妙に話した。大仕事を終えた武蔵川新理事長は「正直、緊張した。必死で歓声も拍手も覚えてないけど、そういう反応をいただけたことはありがたい限り」と胸をなで下ろした。今日15日は外部役員を決める臨時理事会でリーダーシップを発揮する。【柳田通斉】