日本相撲協会は2日、東京・両国国技館で理事会を開き、大麻所持で神奈川県警に現行犯逮捕された十両若麒麟容疑者(25=本名・鈴川真一、尾車)を解雇処分、師匠の尾車親方(元大関琴風)を委員から平年寄へ2階級降格にした。より重い除名処分を求める声も上がったが、「かわいそう」の声が強く解雇となり、退職金529万円も支払われることになる。昨年8、9月の大麻問題で降格された2人の親方の再昇格も明らかになり、身内に甘い協会の体質が露呈した。
「鬼の武蔵川」が、仏の甘い判断を下した。「若麒麟は解雇。退職金も支払うことになると思います」。理由は、元若麒麟容疑者への情状だった。
武蔵川理事長
本人も25歳と若く、第2の人生のことも含めて考えれば、除名まではちょっとかわいそうじゃないかという意見も出まして、解雇ということになりました。
理事会では「除名」と「解雇」という意見が、真っ二つに割れたという。「再発防止に取り組んでいる中、確信犯的な若麒麟の行為は許せない」と除名を訴える理事がいる一方で、外部監事の吉野準監事(元警視総監)が「除名は相当なことがなければという内容。同じクビでも、江戸時代で言えば打ち首獄門に相当する。特別なことなので、伝家の宝刀を軽々に抜くべきではない」と訴えたという。それでも、退職金を支払う解雇に違和感を訴える役員は除名を主張。同監事が「退職金を払わないから除名するというのは、本末転倒。規則に不備があること」と訴え、武蔵川理事長も賛同。過去の大麻問題で3人のロシア出身力士を解雇した前例にならった。
役員の責任は不問とされた。事件発生当日の会見では「責任の取り方を考える」と言ったが、この日は「今後、2度とないように再発防止に努めていく」と繰り返すだけ。昨年秋場所前の就任時に「第一のテーマは再発防止。全力士に厳しくしていく」と宣言したが、それを守れなくても自らにペナルティーを科さなかった。当事者本人と師匠の尾車親方だけが処分された。
さらに協会はこの日、昨年の大麻問題で2階級降格になった2親方の1階級昇格を決めた。昨年8月に弟子の若ノ鵬(解雇)が大麻所持で逮捕されたことに伴い、理事から委員に降格した間垣親方(元横綱若乃花)は、役員待遇に。同9月に弟子の露鵬の大麻使用が明らかになり、委員から平年寄に降格した大嶽親方(元関脇貴闘力)は、主任となった。武蔵川理事長は「本人たちも反省しており、社会的制裁も受けた。間垣は元理事、大嶽は元委員という協会への功績も込めて1階級上げた」とのコメントを文書で発表した。
重なった「甘い判断」に、協会内でも「世間は納得しないだろう」の声が漏れた。ある関係者は「若麒麟に退職金を支払うというのは、今後、余計なことは話すなという口止めの意味もあるのではないか」と指摘する。世の常識とずれた身内への甘さでも、角界は再び窮地に陥った。

