暴力団問題が特別調査委員の解任まで発展した。5月の夏場所で住吉会系組長が維持員席で観戦した問題で、山口弘典委員(77=日本プロスポーツ協会副会長)が最高顧問を務めるヤマグチ土浦ボクシングジム岩本悟会長(60)を経由して入場整理券が渡っていたことが、23日明らかになった。2人は関与を否定したものの、この日の調査委では監督責任として山口委員の退任を日本相撲協会に勧告。持ち回り理事会で承認された。生活指導部特別委員も辞任の方向となった。

 山口委員は「悪いことはしていない。辞任はしない。辞任すればやましいことをしたことになる」と言い残して国技館を後にした。会議でも関与を否定したが、結論は理事会への退任勧告でまとまった。角界の暴力団問題が、ついに調査する側の委員の事実上の解任まで発展した。

 会議では山口委員が協会役員へも報告したなどの事情を説明した。伊藤座長は「調査委にも武蔵川理事長にも情報が上がっていなかったが、監督責任がある。大所高所から判断した」と辞職を勧めた。山口委員は拒否し、残る9人の決議で理事会への勧告となった。

 夏場所14日目に組長が観戦した維持員席は、02年に退職した元呼び出しが現役時から所有。山口委員が顧問を務めるヤマグチ土浦ジムの岩本会長は以前から知り合いで、整理券を融通してもらっていた。夏場所は人づてに建設会社社長へ手配を依頼され、岩本会長が渡したという。協会では6月に元呼び出しの維持員資格をはく奪している。

 岩本会長は当日に呼び出されて組長と対面も見ず知らずだった。会社社長が脳梗塞(こうそく)で倒れたため、どのようにして渡ったかは把握できていない。「とばっちりを受けたようなもの。呼び出しさんや山口さんに迷惑がかかって申し訳ないが、こちらとしても腹立たしい」と話した。

 山口委員は時津風部屋序ノ口力士暴行死事件を受けて発足した再発防止検討委員会(生活指導部特別委員会に改組)の外部有識者委員に就任した。今年6月には調査委にも入った。野呂田委員は「終始、反社会勢力を許さない主張をしていた。気の毒だが、いささかの疑惑も疑念もあってはいけない。調査委の権威を守るため」と、解任理由を説明した。

 維持員席利用は原則的には維持員に限られるが、譲渡が日常化している。ガバナンスの整備に関する独立委員会でも最初のテーマに。伊藤座長は「今までは調査委、将来については独立委と分けて対応していく」と話した。24日には第2回独立委が開かれる。