日本相撲協会が10日、またも大失態を演じた。角界の改革を担うガバナンス(組織統治)の整備に関する独立委員会のアドバイザーなどを務める望月浩一郎氏(53=弁護士)に同日午前、「一区切りついた」との理由で業務委託契約の解約を通達。その約3時間半後に撤回した。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)の「指示」で出した通達をわずかな時間でひっくり返す異常事態。ドタバタ劇の末、協会内部と改革を進める外部委員との間に、不信感を生む結果となった。

 この日午前9時半すぎ、相撲協会の事務方が、武蔵川理事長の意向を受けた親方衆の指示のもと、望月氏に業務委託契約解約のメールを送った。

 「8月5日に武蔵川理事長が復帰し、一区切りついたとのことで、理事長からの指示によるものです。必要な手続き等ございましたら、ご連絡ください。協会の危機的な状況に際し、ご尽力いただき、誠に有難うございました。御礼申し上げます」。

 望月氏は独立委アドバイザー、特別委委員のほか、文科省との連絡担当など相撲協会と6件の業務委託契約を結んでいるため、どの業務が「解約」なのか質問するメールを返信。この事実をマスコミ各社に公表し「協会の総意であるなら、協会が本当に再生可能なのか、再生できずに瓦解するのではないかという危惧(きぐ)を抱いております」とコメントを出した。

 午後2時半すぎ、陸奥広報部長(元大関霧島)は、協会としてメールを送ったことを認め「理事会で決める。12日にはっきり言います」とした。武蔵川理事長は「関係ない。広報に聞いて」と言って帰宅した。

 望月氏によると、協会から連絡を受けた調査委の伊藤座長は「解任を了承しない」と回答。同意見の独立委・奥島座長は、高野連会長として訪れた甲子園球場のそばで心境を述べた。

 奥島座長

 若手親方たちが、理事長に詰め寄ったらしい。彼(望月氏)は文科省と相撲協会の連絡役を担当していた。文科省の厳しい意見を伝えているが、協会は望月くんの主観も入っていると勘ぐっている。(協会が契約解除を)引き下げなかったら、ある意味、戦争だよな。信用できないというなら、改革はもうやってほしくないと言っているとしか、思えない。

 ところが7時すぎ、望月氏は午後に急展開があったことを公表した。午後1時すぎに、協会執行部の一員から「引き続き、委任業務を行ってほしいというのが、日本相撲協会の意向である」との電話連絡を受けたという。しかし、解任通知をメールで受けたため、文書かメールでの連絡と事情説明を求めた。

 望月氏から連絡を受けた監督官庁の文科省は、この日午後「協会に経緯とか、今後どうするかを聞かないといけない」と、事情を聴取する意向を示した。協会の事務方は、執行部が望月氏に連絡を入れた事情を伝えられず「全然知りませんでした」と驚くばかりだった。

 理事長が決めた重要な人事を数時間で一転させるドタバタ劇。関係者を混乱させた上、角界再生へ改革の両輪となるべき協会内部と外部委員との相互不信が露見してしまった。