元横綱朝青龍関(30)が27日、どの力士も横綱白鵬に勝てない本場所の土俵に痛烈なゲキを飛ばした。来日した成田空港で取材に応じ、62連勝中の白鵬を止めるのは誰かと問われると、現役力士の名前は挙げず「オレ」と一言。自分が引退してから、誰も白鵬を止められない危機的状況をずばりと指摘。遠慮なく、本質を突き、自身の存在感を見せつけた。

 角界OBとして、誰も白鵬を倒せない現状は、物足りなく感じたのか。シンガポールから日本に戻ったこの日早朝、成田空港で元朝青龍関が、本音を言った。「白鵬の連勝を止められるのは誰だと思いますか?」と聞かれると、少し考えた後「オレ」と一言、表情を変えずに言った。

 短い言葉に、深い意味が込められた。モンゴルの後輩ら、現役力士の名前は挙げられなかった。引退した力士は、もう白鵬とは戦えない。あえて「オレ」と言ったのは、元横綱の負けん気の強さと、自身の引退後は、誰も対抗できない角界の問題点を、ズバリ指摘した形になった。

 シンガポールでは、F1を観戦しつつ、10月3日の引退相撲(両国国技館)に出席する同国のセレブたちにあいさつをした。秋場所は観戦できなかったが、「(白鵬が)どうせ全勝したんだろ」とぽつり。この日は30歳の誕生日を迎え「もう1回体を鍛える」と、体がうずいていることも明かした。

 一方で、白鵬を思いやる気持ちも示した。「オレ」と言った数秒後「そんなやんちゃなことは言わないで、後で電話して『おめでとう』って言うよ。横綱になった者にしか、分からないものがあるんだ。あいつはすぐに泣くから、あんまり泣かせないでよ」。土俵上では、白鵬の強さしか目立たない、朝青龍引退後。引退相撲の告知ウェブサイトで「俺はあと2年、大好きな相撲を続けたかった」とつづった元横綱は、白鵬と戦いたい気持ちをにじませていた。【佐々木一郎】