東北福祉大学硬式野球部(仙台6大学リーグ)の神戸宏基主将(4年)が、10日開幕の全日本大学野球選手権で、異例ともいえる左手を挙げての選手宣誓を行う。3日の練習中に右肩を脱臼。右手を挙げることが慣例となっている宣誓が困難になったため、全日本大学野球連盟側に是非を打診していたが、5日に正式了承された。8日午後に東京入りするチームは、大会史上初と思われる“サウスポー宣誓”から、4年ぶり3度目の優勝を目指す。

 心待ちにしていた自身初の全国大会出場を目前にして、右手を真っ白な三角巾(きん)で固定した痛々しい姿。だが、仙台6大学勢として初めて全日本大学野球選手権で宣誓する神戸主将は「(左手を挙げての宣誓は)いいのかな、という感じですが光栄です。宣誓文はまだ考えていませんが(病気や経済的事情で)野球を続けたくてもできない人もいる。そんな思いを盛り込み、野球を見に来てくれる人たちにも勇気を出してもらえるような内容にしたい」と前向きに話した。

 3日の練習中、二塁へスライディングした際に右肩を脱臼。まだ痛みは残る。今春は背番号10の控え三塁手として、東北大戦でリーグデビュー。わずか1イニングの守備固めも、全国舞台でプレーする期待が膨らんだ。その夢は絶望的になったが「一塁コーチとして左手は回せます」とチームリーダーとしての意気込みを見せる。

 左手が「主役」になるのは中学以来になる。小学校高学年のころから故障に苦しみ、右の野球ひじ(ねずみ)を手術するまでの中学3年間は左投げでプレーした実績もある。

 左手による選手宣誓は、今年で57回目を迎える全日本大学野球選手権で、大会関係者も「過去、記憶にない」という歴史的出来事になる。大会史に、その名を刻むことになる神戸主将は「野球を続けられることに感謝しながら、自分たちのできることをやって日本一を目指したい」とチームの気持ちを代弁した。【佐々木雄高】