昨年のドラフト会議を終えた時点で、ドラフト6位の高卒投手がCSファイナルステージの3戦目、日本シリーズ進出をかけた大一番に先発するなど、誰が想像しただろうか。

巨人戸郷は球は全体的に高かったし、制球もアバウト。スライダー、スプリットの精度も良くはなかった。だがリーグ戦で2試合しか経験のない投手が、大舞台であれだけ思い切って腕を振って投げられるのは、それだけで素晴らしいこと。表情も変わらず、緊張を感じさせないのも勝負の世界では長所と言える。

3回は安打と連続四球で2死満塁のピンチを迎えた。12日が台風で順延であることを考えれば、小刻みに継投に入っても、おかしくない場面。それでもベンチからの「何とか抑えてみろ」という期待感からの続投に応えて、糸原を見事に抑えた。2-1から内角直球で詰まらせて三邪飛に打ち取った1球は、意図を感じさせる攻めだった。

エース菅野の状態が良くない状況からすれば、日本シリーズに進んでも短いイニングなら先発を任せられるだろう。逆にペナントで全力投球のスタイルでローテを守った桜井は、へばりの見える投球で不安が残る内容だった。

来季以降を考えても将来性を感じさせ、楽しみだ。ドラフト1位でどういう選手をとれるかということも大事だが、下位で戸郷のような選手を掘り出すのもスカウトの醍醐味(だいごみ)。チーム力を大きく伸ばすことにつながる。(日刊スポーツ評論家)