阪神藤浪晋太郎投手(26)が今季3度目の先発でも勝てなかった。6回に巨人岡本に2点適時二塁打を浴びるなど、粘り切れずに8回4安打4失点で3敗目。復調の気配を見せながらも、復活星が遠い。日刊スポーツ評論家の山田久志氏(72)は投球内容を評価しつつ、直球勝負に敗れる理由を解説した。

   ◇   ◇   ◇

またしても藤浪は勝てなかった。3戦3敗。今季最長8回を投げきって、わずか4安打の4失点(自責1)。“ここ”という踏ん張りどころで打たれた。

山田 藤浪は敗れはしたが投げるたびに投球内容が良くなっている。この日はこれまで登板したなかで最も評価できるマウンドだった。まずボールがぶれない。抜け球は数えるほどで本人の表情からも球が抜ける不安から解放されて手応えさえも感じているようにみえた。

今季最速157キロを計測。“荒れる藤浪”のイメージは消えうせ、3回吉川尚の1四球にとどまった。ここまでの与四球率3・43は、1年目(2・88)に次ぐ最少の数字をはじき出した。

山田 それにフォークを多投するようになって、カウント2-2、3-2と追い込んでからでも投げられるようになった。他球団はすっかり印象が変わった藤浪のデータ収集を急いでいることだろう。あと残された修正すべきところは1点。それは走者を背負ったときの投球フォームにある。

3回2死二塁から若林に中前適時打。6回1死一塁から坂本に1ストライク後の152キロを右前打。続く丸の中飛で一、三塁になった後、4番岡本に157キロを右越え二塁打で2点。いずれも外角高め直球だ。5番大城にも左前タイムリーで加点された。

山田 今の藤浪は無走者の場面と、背負ったときの球質が微妙に変化する。走者がいるとバックスイングと体重移動のバランス、タイミングがわずかに合わないのだろう。それは走者を気にするからなのか、点を与えたくない気が走るからか何かは分からない。もともとバックスイングが深く入るタイプだが、そこから出ていくときのフォームが少しだけずれる。だから150キロ超の同じストレートでも得点圏に走者を置いた坂本、岡本に球質が落ちた球が餌食になった。

山田本人は藤浪の3試合目の登板を前に、7月23日の広島戦(甲子園)、同30日のヤクルト戦(神宮)の全221球をチェックした。

山田 もっとピンチに強いピッチャーにならないと。ただこの一戦は打線の援護がなかった。巨人は戦力層が厚いからいろんな手が打てる。阪神も打てるときはいいが、打てないとちょっとそこに薄さがある。安定感がでてきた藤浪にはこれから自然に白星はついてくる。

阪神対巨人 8回裏の攻撃をベンチから見つめる藤浪(撮影・前田充)
阪神対巨人 8回裏の攻撃をベンチから見つめる藤浪(撮影・前田充)