85年日本一監督の吉田義男氏(87=日刊スポーツ客員評論家)がV争いに参戦することなく終戦しようとしている阪神の戦いにカツを入れた。最後の東京ドームでようやく勝ち越したが、「8勝15敗は負け過ぎ。戦う集団として厳しさが必要」と厳しく指摘。選手個々の力は「素晴らしい」とした上で、来季16年ぶり奪回に向け「フォア・ザ・ミー」から「フォア・ザ・チーム」への転換を求めた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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-阪神が開幕カードでつまずいた東京ドームで、最後になって勝ち越した。

吉田 不思議なチームですな。「個」は素晴らしい力を発揮するのに、これが「束」というか、1つになって勝ちにならない。とても不思議で、この3連戦を複雑な思いで見ていた。

-高橋が菅野に投げ勝ったカード2戦目に続き、この日は秋山が完投勝利。大山、近本、陽川も結果を出した。

吉田 高橋が好投し、秋山が粘った。陽川のホームランは素晴らしかった。近本も、大山もいい働きをした。でも今年も巨人に勝てなかった。8勝15敗(東京ドーム3勝9敗)は負け過ぎです。さっきも言ったように「個」は負けてないのに、試合で負ける。もったいない。

-新型コロナウイルス感染拡大による特別なシーズンはある意味、ベンチ対ベンチの勝負でもあった。

吉田 例えば初戦にマルテが一塁で4つのエラーをした。これは結果だ。でも2回に田中俊の一ゴロをファンブルし、その後でバックトスのような格好で送球した軽率なプレーをした。非常に不快だった。わたしが指揮官だったら、ベンチに下げてますわ。プロの戦う集団として、厳しさが必要だったのと違いますか。

-来シーズンにつなげる戦いを、と一言でいっても難しい。

吉田 チームに「柱」がほしい。投の菅野、打の岡本を看板にした原監督の采配は、世代交代を意識した戦いに見えた。そこに若手の思い切った起用がスパイスになった。阪神は大山が本塁打のタイトルを取って、一皮むけてほしい。育てることに重点を置きつつ、シーズン通して働く外国人も必要だろう。そして個が勝ちにつながるように、「フォア・ザ・ミー」ではなく「フォア・ザ・チーム」に導くことだ。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

巨人対阪神 完投勝利を挙げた秋山(撮影・前田充)
巨人対阪神 完投勝利を挙げた秋山(撮影・前田充)