元横浜の日本一監督で日刊スポーツ評論家の権藤博氏(82)が17日、阪神の沖縄・宜野座キャンプを視察し、藤浪晋太郎投手(26)の復活調整に太鼓判を押した。キーワードは笑顔。球は変わっていないが、取り戻した自信が最大の武器と分析。首脳陣が藤浪を使いこなせば優勝争いできるとし、その逆はBクラスの危機もあるとキーマンに指名した。

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藤浪はすごくいい顔をして投げていたね。何より明るい。顔色もいい。「復活のほほ笑み」といったところだろうね。1、2軍を行き来していた頃とは全然違う。昨季終盤に1軍で投げることができて、Aクラス入りに貢献できた喜び、また1軍で投げられる充実感がにじみ出ている。何が変わったかって、球自体は変わってないですよ。変わったのはあふれる自信。すごいです。さすがです。やっぱりモノが違う。元の藤浪に戻ったということです。

ワインドアップで投げてましたが、投げる球は一緒なんです。セットポジションの方がシンプルで、力が入る無駄な動きがない分、コントロールが安定する。四死球を気にしとったんでしょ? ワインドアップはその心配が払拭(ふっしょく)された証しです。相手は迫力、威圧感を感じていやですよ。ただでさえあれだけの上背で角度がある、球は速い、荒れ気味と、相手が嫌がる要素を備えている上にね。

阪神が優勝争いできるかどうか、投手のキーマンはもちろん藤浪でしょう。阪神ベンチは、何としてもこの男を使い切らないといけない。先発でも中継ぎでも抑えでもいい。調子が悪いからファームという選手ではない。大阪桐蔭時代の甲子園で春夏V、阪神入団後も3年連続10勝以上。これほどポテンシャルの高い選手が他にいますか? 眠らせておいてはいけない。元々故障しないし、故障にも強い。仮に先発だとして、心身ともに今の状態をキープすれば、勝ち越して2桁以上勝つと思いますよ。規定投球回ぐらい投げられれば、阪神は優勝争いに参加しているでしょう。

藤浪本人に求めることなんて、何もないですよ。1イニングに四球4つ出したって1点じゃないですか。これほどの投手にあれこれ言うのは失礼。新人みたいに10勝以上目指しますとか言う段階はとっくに超えている。どれぐらい勝つかは、私ではなく本人に言わせたいですね。選手の力が横一線のチームなら入れ替えもありだが、藤浪は阪神の中でも飛び抜けている。絶対に欠けてはいけない選手なんです。もし使い切れなかったら言語道断、Bクラスの危機もあるでしょう。(日刊スポーツ評論家)

ブルペンで笑顔を見せる阪神藤浪(撮影・前田充)
ブルペンで笑顔を見せる阪神藤浪(撮影・前田充)