やはり打線は水ものだ。いい投手と対戦したり、厳しいコースを攻められた時は、そう簡単に点は取れない。近本が出塁すれば、攻撃のバリエーションは増えるが、今は打つだけの攻撃になっている。4分5厘という打率が物語るように、打撃の形が良くない。

まず近本の打撃フォームを見れば、自然体で構えられていない。手に力が入ってしまい、バットの出が悪くなっている。力が入ると、どうしても右肩が早く開いてしまう。ボールを呼び込む形ができず、インパクトの瞬間に力が伝わるスイングができていない。8回の打席も球数こそ投げさせたが、ファウルで粘っているのではなく、当てるだけで精いっぱいの形になっている。また塁に出られなければ、セーフティーバントなど揺さぶりをかけることも必要だが、今の状態ではその余裕もないように見える。

昨年も開幕の不振からの調子を取り戻した時に、解説させてもらったが、自然体に構えることで、スムーズに打撃のトップに入り、調子を上げた。近本が復調すれば、塁上をかき回して、勢いのある攻撃を展開できる。そういう戦いをするためにも、近本の状態を上げることは急務だ。

こういう場合、考えられる手は2つだ。試合に出て打席を重ねながら調子を上げていくこと。もう1つは、打撃に違和感を覚えているなら思い切って休ませて、しっかりと打ち込ませること。それは監督の考えによる。しかし、まだ開幕から5試合だ。今は1試合、1打席ごとに打撃コーチと話しながら、練習で課題に取り組んで、いかに試合に入っていくかが大事になる。打つだけ一辺倒では、長いシーズンは通用しない。近本は打線を象徴する主力の1人。彼で勝つような野球をしたい。(日刊スポーツ評論家)