キャンプから見て、阪神の強みは選手層の厚さにある。3年目の矢野燿大監督(52)が自信をもって采配をふるい、勝利に結びつけた試合だった。

前日はホームでサヨナラ勝ち。これは勢いが出る勝ち方で、いかに連勝につなげるか。そこで先発メンバーで動きがあった。ラッキーボーイ的存在になった山本を遊撃で起用することで、いい流れをなる。打撃の状態、疲労を考慮しながら、佐藤輝を外し、陽川を使った。陽川はオープン戦でアピールしており、チャンスを与えてもいいタイミングだ。この決断は普通にあることだ、と思う。

中日小笠原は初回こそバラつきがあったが、尻上がりに調子を上げた。右打者の内角ストレート、そして特にチェンジアップがいい高さから抜けていた。落差のあるカーブを入れながら、緩急の部分で球速差がかなりついていた。右打者は的を絞れず、戸惑っているように見えたが、その中で陽川が決勝打を放った。打った打者も素晴らしいが、監督の采配が的中したということだ。さらに7回には先頭の代打中野が安打で出塁し、貴重な3点目の糸口になった。大きな注目を浴びてきた佐藤輝だけではない、というところを見せた。

試合のポイントとして、もう1点挙げれば、7回1死で好投のガンケルを降板させ、継投に移った。球数はまだ92球で続投させてもいい状況。7番木下拓を打ち取った後は、代打を含めて左打者が並ぶ確率が高い。そこでスパッと決断し、リリーフ陣は1人の走者も許さなかった。先発で言えば、1試合で2、3度のピンチはある。6回2死一、二塁の場面はこの試合3度目のピンチともいえたし、そこを無失点でしのいだことも決断の背景にあったかもしれない。この試合の矢野監督の采配は評価されるべきだ。

広島戦に負け越し、この日は勝って6連戦を五分にもっていきたいところ。そこを勝ち切れたのは大きい。あらためて選手層の厚さを感じたし、シーズンに入っても、熾烈(しれつ)な争いは続いている、今年の阪神はそこが昨年と違うところで、チームの力として感じる部分だ。(日刊スポーツ評論家)