オリックスは試合前にロッテ戦中止が決まったことで、マジック点灯の可能性はなかった。ロッテ、オリックスともに最後の最後まで競り合う大接戦が続く。この試合、オリックスには日本ハムのチーム事情に2点の注意ポイントがあった。引退する斎藤にどう対応するか、連続3割がかかる近藤をいかに抑えるか、この2点だった。

斎藤は1点リードの7回に2番手として登板。先頭の福田にフルカウントから最後は変化球が外角に外れて四球。私はオリックスの打者は全力で打つだろうと考えていた。画面からは、引退登板という感傷的な空気は感じられず、真剣勝負の結果、四球という印象だった。恐らく、甘く入れば福田も迷わず打っていただろう。この試合の重要性を考えた時、真剣勝負すべきと思っていた。

私は14年9月28日のオリックス戦で引退試合をやらせていただいた。当時、オリックスはソフトバンクと熾烈(しれつ)な優勝争いの最中。私には全打順本塁打の可能性があり、伊東監督の配慮で1番DHで出場した。

吉田一将と山崎勝己のバッテリーとの対戦。1回裏の攻撃直前、山崎から「状況が状況だけに、すいません」と言われた。私は「真剣勝負だな。わかった」と返した。第1打席はフォークを見逃し三振。第2打席はワンバンのフォークを空振り三振。ストレートでのストライクはなかったと記憶している。ものの見事に抑えられた。

左ヒザを痛め、2軍でマシン打撃のみで調整した。マシン打撃だけで、いきなり1軍投手のボールが打てるのかと、最後の打席で挑んだ。プロは甘くない。これが見え見えのストレートなら、もしかしたらホームランが打てたかもしれない。やっぱりスピード感がものすごく「これは無理だな」と痛感した。

引退試合だからと手を抜いてもらうのではなく、打てなくても最後まで真剣勝負でやり抜けたことは本当に良かったと思っている。

もうひとつ。オリックスは日本ハムの4番近藤を抑える必要があった。3年連続3割の近藤には連続記録がかかる。28歳の近藤には大チャンスだ。規定打席をクリアし、チームもCS進出を逃した。3割に到達すれば残りは欠場する可能性がある。

しかし、オリックスが抑えれば、近藤は最後まで必死にやるだろう。日本ハムは23、24日にロッテ戦を控える。つまり、オリックスが近藤を抑えれば、近藤がロッテ戦に出場する図式に持ち込める。若手主体に移行する日本ハムの中で、近藤がいる、いないでは、ロッテ投手陣への圧力はまるで違う。3連戦で12打数3安打。打率は2割9分4厘で、率は下げられなかったが、打率3割にはまだヒットが必要な状況だ。

オリックスも、ロッテも残り試合すべて必勝の総力戦の様相。この敗戦を引きずっている場合ではない。(日刊スポーツ評論家)