阪神にとっては、投打にわたって収穫があったのではないか。打線はヤクルトの先発奥川から3回2/3で5得点。一方、左打者を並べられてから勝てなくなっていた青柳が、7回無失点で抑えて勝利投手。逆転優勝の可能性は厳しくなっているが、CSでも対戦の可能性があるヤクルトに対し、内容のある勝利を挙げた。

阪神対ヤクルト 1回裏阪神無死一塁、左前打を放つ中野。投手奥川(撮影・前田充)
阪神対ヤクルト 1回裏阪神無死一塁、左前打を放つ中野。投手奥川(撮影・前田充)

「奥川攻略」へ、初回からの積極的な攻撃が役に立った。先頭打者の島田が2球目を中前にはじき返すと、2番の中野の打席で1ボールからエンドランを仕掛けた。立ち上がりに不安があり制球力のいい奥川に対しては有効の攻め。そして3番の近本が1ストライクから右翼スタンドで3ラン。わずか6球で3得点した。

青柳も落ち着いていた。初回1死一、二塁から4番の村上にストレートの四球。結果だけを追うと、褒められるような四球ではないが、苦手の左打者に対して慎重に攻めた上だろう。続く右打者のサンタナには、カウント2-2から内角のツーシームで注文通りの遊ゴロ併殺。スタメンから右打者の塩見と山田の外し、1番から4番まで左打者を並べたヤクルト打線を抑えてみせた。

試合を決めたのは、奥川が4回2死二塁から投手の青柳に出した四球。4回裏が始まる前に雨のため一時中断。間隔が空き、再開してからもマウンドも整備を頼んだように不運な面もあったが、島田に中前安打を打たれて降板。あとは阪神の一方的な試合になった。

阪神対ヤクルト 8回裏阪神1死、大山は左前打を放つ(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 8回裏阪神1死、大山は左前打を放つ(撮影・上山淳一)

ただ、気になる点がある。17日の広島戦から2試合、復帰していた4番の大山がスタメンから外れた。広島2試合では8打数1安打5三振。調子が悪くて外れたということだが、途中出場して左前安打。代走も出ていなかったし、大事を取ったわけではないのだろう。このヤクルト2連戦は最後の大一番。大事をとって欠場し、調子を崩したのかもしれない。ただ、それならば大山の調整ミスだし、矢野監督の休養の取らせるタイミングが悪かったと指摘されても仕方ない。

苦しいとはいえ、まだ逆転優勝の可能性はある。優勝を諦めてCSを優先させたように感じてしまう起用法は、ペナントでの優勝を軽視しすぎ。確かにメジャーではポストシーズンでの戦いを最優先する。しかし、ポストシーズンは盛り上がる半面、通常の試合で観客の入りはいまひとつ。メジャーと同じような流れになると、コンディション作りを優先して“本気度”が下がり、シーズン中の戦いが盛り上がらなくなれば野球界の危機につながってしまう。

大山抜きの打線は機能した。4番打者を任せていた打者が、2試合の不振でスタメンから外れるのはどうかと思う。それなら4番に起用しなければいい。とにかくヤクルト戦は今日も行われる。大山の奮起を見せてほしい。(日刊スポーツ評論家)

阪神対ヤクルト 8回裏阪神1死、大山(右)は左前打を放ち筒井外野守備走塁コーチとグータッチ(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 8回裏阪神1死、大山(右)は左前打を放ち筒井外野守備走塁コーチとグータッチ(撮影・上山淳一)