若手の育成は本当に難しい。身体能力に恵まれていても、それを技術として使いこなせないといけない。能力と技術を持っていても、重圧をはね返す強さも必要で、それがなければ結果を残すことができない。「心技体」のすべてがそろっていなければ、なかなかレギュラーの座にはたどり着けない。

ここ数年、巨人の新しいレギュラー候補の1番手として、吉川の名前が挙がるだろう。開幕も近づき「2番・セカンド」でスタメン出場。7回に中前安打を放ち、なんとか4打数1安打だったが「セカンドは吉川で大丈夫」という域までは届いていない。素晴らしい能力を持っていながら、なぜ物足りなさを感じるのかを振り返ってみた。

初回の先頭打者・福田の当たりはゴロでセカンドの吉川のグラブをはじき、ライト前ヒットになった。記録がヒットになったように強い当たりだが、本人も「アウトにできた」と思うだろうし、ベンチも「捕ってほしい当たり」だったのではないか。

技術的には打球のバウンドを合わせるとき、グラブを上から下に使っていた。基本はどんなバウンドでもグラブは下から上に使わなければいけない。だから捕れなかった。ただ、京セラドーム大阪のグラウンドは硬く、不慣れな部分も差し引いてあげられる。しかし、プレーしている吉川は、このプレーで追い込まれてしまった。

2回、先頭打者の宜保の当たりは、なんでもないセカンドゴロだった。ところがバウンドのタイミングを合わせ損ない、一瞬だがヒヤリとした。私が見る限り、最初は簡単に捕りにいこと動いたが、先ほどのプレーが頭をよぎったのだろう。「丁寧にいかないと」と思い直して回り込んだから、バウンドが合わなくなったのだと思う。

4回にも記録に残らないミスがあった。2死満塁から右翼線への二塁打に対し、カットに入った吉川がホームに投げなければいけないのに、同じカットマンの中田への送球になった。右翼線の打球はフェンスまで到達した当たりではなかったし、松原のプレーにもミスはなかった。一塁走者の福田のナイス走塁ではあるが、これでホームにかえられるようではいけない。

ミスをしたときに、選手の本質が試される。萎縮してズルズルとミスを続けるようでは、レギュラーにはなれない。ミスが続かないような技術の裏付けが必要だし、気持ちを切り替えられるタフさも必要。理想として「俺がエラーしても、みんなは仕方ないと思うだろう」と周りに思わせること。必死に練習するだけでなく、必死な姿を見せることも大事。精神的な面では反省しても萎縮しない強さと、それを超越する闘争心が必要になる。

巨人というチームは注目度も高く、常勝を義務付けられている側面が強い。その分、若手を我慢して起用できる期間は短くなる。個人的にはもう少し我慢して余裕を持たせてプレーさせてあげたいが、それが許されないのなら本人が踏ん張るしかない。吉川は素晴らしい「能力」を持っている。あと1歩の技術力と萎縮しない根性があれば、レギュラーには手が届く位置にいる。頑張って乗り越えてほしい。(日刊スポーツ評論家)

オリックス対巨人 7回表巨人無死、中前打を放つ吉川(撮影・河田真司)
オリックス対巨人 7回表巨人無死、中前打を放つ吉川(撮影・河田真司)