こう言っては失礼だが、格下のチェコを相手に予想通りに大勝した。ただし、侍ジャパンが予想通りの強さを発揮した勝利かと問われれば、苦笑いで「どうなのかな」という答えにとどめておきたくなる試合だった。世界一が期待されるチームだけに、煮え切らない要因を突き詰めて考えてみた。

初回に先制点を奪われた。別に1点を先取されても、負ける気はしなかったが、失点の背景に不安が残った。源田が右手を負傷してスタメンは中野で、2死二塁から何でもないショートゴロを悪送球しての失点だった。

野球にミスはつきものだし、もともと中野はスピードを武器にした打撃が売りの選手。1つのミスで責めるつもりはないが、源田の代わりを務めるショートとして考えると、今後の不安は大きくなる。メンバー構成を見る限り、改善策がないからだ。

攻撃力を重視した打線も、序盤は120キロ台中盤の真っすぐとチェンジアップを操る超軟投派投手を打ちあぐんだ。打席で見ないと分からないが、チェンジアップがナックルのように揺れるように落ちていたのかもしれないが、3回2死一、二塁からの吉田の逆転打が出るまで4三振。それほど強振せずに軟投派投手の攻略の基本通りに逆方向を狙って打っていたのは吉田だけのように感じた。

先発した佐々木は65球の球数制限があって3回2/3で降板。3者凡退で打ち取ったイニングはなかった。三振は8個を奪ったが、もっと真っすぐ主体で押していけばもっと球数を少なくできただろう。

初回に内角低めの163キロの真っすぐを二塁打されて慎重になったのかもしれないが、チェコ打線が160キロ前後の真っすぐをボコボコとホームランを打つイメージはない。むしろ高めに浮いた変化球の方が1発になる可能性は高い。佐々木の能力を考えれば、マウンドからもっと圧倒的なピッチングを見せて、味方打線を勇気づけるような姿を見せてほしかった。

力の差は歴然としていた。どんな戦い方をしても勝てただろう。それでも4番の村上の不振は気になるし、現在の状態なら大谷の後ろを打つ4番には明らかに吉田を起用した方がいいが、変更はなかった。

WBCの日程を見る限り、本当の勝負は準々決勝から始まると言っていい。強豪を相手にするまでにどういう戦いをしてチーム状態を高めていくかが大事。世界一を狙う準備の仕方に疑問が残るから、評判通りの強さを感じないのかもしれない。(日刊スポーツ評論家)

日本対チェコ 1回表終了後、中野(右)に声をかける源田(撮影・横山健太)
日本対チェコ 1回表終了後、中野(右)に声をかける源田(撮影・横山健太)
日本対チェコ 1回表チェコ2死二塁、味方のミスから先制点を許す日本の先発佐々木(撮影・たえ見朱実)
日本対チェコ 1回表チェコ2死二塁、味方のミスから先制点を許す日本の先発佐々木(撮影・たえ見朱実)